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本の感想
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耳をふさいで夜を走る
石持 浅海
徳間書店
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本質とは別のところにあるかもしれないが涙を誘われた「温かな手」、推理の展開は横に置いておいてもとんでもない設定で楽しめた「人柱はミイラと出会う」とは対極。
「BG、あるいは死せるカイニス」と同じ組だな。
出版されている本を全て読んでいるわけではないが、私には石持さんの本は「好き」か「嫌い」にはっきり別れるみたいだ。
そうわかってるならあらすじ読んで判断しろよ!ってつっこみはナシです。
表紙見返しの内容紹介で主人公並木が人を殺す、しかも連続殺人を決意しているのだからそういう話だとは想像つく。
でも最初に銘打っていればそれだけではないものを期待するじゃないですか。
確かにそれだけではないのですが…。
小説内で人が殺し殺されるのは「そういう話」だとして読めるけれど、意識の操作には嫌悪感。
まして善人面したその下で実験と称してのことだもの。
小説内での話として読めない自分がどうかしているのだろうけれど。
命を操作するような「BG~」と同じ匂いがする。
覚醒、あちら側、こちら側、という言葉が薄気味悪く感じられる読後感でした。
並木やその仲間がどういった組織に属していて、殺すつもりの女性たちがどういった境遇におかれているのか、最初には説明がないので組み立てながら読むのは魅力的だったけども。

マンドレイクの伝説は知っていたが、アルラウネが同じものを意味するとは…。
不勉強でした(苦笑)。
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しらみつぶしの時計
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法月 綸太郎
祥伝社
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探偵法月綸太郎の登場しない九篇+「二の悲劇」の原型という短編集。
以前にも書いたが法月さんの好きなところは、作品について語るところ。
小説誌やネットを探せば作品に対する著者の言葉に巡りあえるだろうが、一冊の本にまとまっているというのが好きなのですよ。
もちろん、話自体が好きでなくてはありがたみも半減なのは言うまでもないけども。
どれも楽しめたがどれかあげるとするなら最初の「使用中」。
ご本人も会心の作と仰ってるし、コント風のオチも場所は場所だが私は好きだ(笑)。
ラストの「トゥ・オブ・アス」、これが元になって「二の悲劇」になったというが…覚えてない…こういう切なさ漂う話は好きなので記憶にないはずないので読んでいないのかもしれない。
とりあえず、あらすじを調べてみようかな(笑)。
この本には作品タイトルや作風に都筑道夫さんを元にしたものが3つほど。
そのせいでどこかの出版社が都筑さんの作品を全集としてまとめればいいのに…という想いがまたもや浮上。
ちくま文庫であった百閒先生の全集のようなものを出してくれるなら図書館派だけど買い揃えますよ。
聞いてないとは言わせない (ハヤカワ・ミステリ文庫 リ 9-1)
ジェイムズ・リーズナー
早川書房
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直前に読んだものがハードだったので、一気に読めるという謳い文句を信じて読んでみたら…ホントにあっという間。
短い章立てで、そこに必ずと言っていいほど「何?」というような転換があって読書スピードを加速させる。
映画や連続ドラマを見ているような感じであれよあれよという間にラストですよ。
それなのにこれでもかってくらい、女性農場主との出会いから現金輸送車襲撃、かつての仲間との一戦、裏切りなのか作戦なのか、と盛りだくさん。
考える間もないっていうのかな。だから私でも早く読めたのかも(笑)。
たまにはこういう勢い読書も必要だな。
農場に仕事を探しに来たはずの青年が簡単に悪事に加担していくのが理解し難かったけれど、ラストで頷けた。
スピード感で読まされていた気がしたけれど、ちゃんとそれらしき導きはされていたのでした。

犬の点は期待はずれかな。
最初見捨てなかったことで過剰に期待しすぎたのかも。
テキサスで犬ときたので、ランズデールを連想してしまったからか。
ランズデールの描く犬と人の関わりには愛を感じるから(笑)。
オチビサン 1巻
オチビサン 1巻
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安野 モヨコ
朝日新聞出版
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20日発売!とか紹介しておいて、入手できたの昨日ですよ(笑)。
でも待った甲斐がありました。
カバーの手触りがよくて、これぞオチビ!という感じ。
英訳付きってどんなかと思ったら、見開きで左にオリジナル、右に吹き出し部分が英語になったもの、というつくり。
あとはところどころに英語で読む人のために「IN CASE YOU WERE WONDERING…」と風習の解説付き。
私程度の英語力でもだいたいわかるのでありがたい。
オチビサンは友だちだけでなく、季節と共に暮らしている匂いが大好き。
季節を感じさせるタイトルバックももちろんだけど、冬は場所を詰めあって日なたを感じ、夏は涼を求めてアイデアを出し、秋や春には匂いに敏感、と彼らは休むことなくその「時」に夢中。
その姿が愛らしくて私も夢中だ。
パンくい登場、オチビとナゼニの大掃除、薄茶色の紳士、パンくい詐欺、と私の大好きなエピソードも再読できて嬉しいったらない。
時々深読みしすぎて目頭熱くしたりもしますが、一頁まんがなのにそれだけ世界の広がりを感じられるということですよ(笑)。
ちょっと驚いたのは連載スタート時のオチビサンって、今より丸っこいの。
これなら人間のお子様に見える。
最近のオチビサンは足が昆虫のように細いので、人間ぽい謎の生命体に見える(笑)。
悪人
悪人
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吉田 修一
朝日新聞社
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気になっていた本であったのに加えて、ほっそさんのブログで人の善悪についての話が出た時に再び興味を駆られ、あまり積極的には借りたくないほどのくたびれ具合でしたが借りました、読みました(笑)。

途中、どうしても読めなくなり放り出した。
内容がどうとかそうではなくてまだまだ心の整理がついていない自分を発見して辛かったから。
娘を殺された父親が通夜の晩に眠れないけれど、もしここで眠れれば、これが夢に変わるかもしれないってところ。
一年半以上になろうというのにあの晩の自分もこのとおりだったな、と鮮明に思い出された。
くせになるからと一緒に寝たことなどなかったので初めて一緒に寝たのが冷たくなる身体の隣だったことを。
手を握りながらこれで朝がくればいつもどおり起きて「ネエチャン、ごはん!」としっぽを振るのではないかと必死でそう思おうとしたことを。

それました、本にもどります。
著者が「リアルを書きたかった」と言ったということに噛み付いたのを読んだ覚えがある。
約束をした場に約束してない本命が現れたこととか、暗く寂しいところで助けの手をふり払う女性とか、警察付きで電話するばあちゃんの言動が不自然とか。
確かにそうだけど、先を読むのを萎えさせるほどのことではないのでは?事実は小説より奇なり、なんだから。こっちが小説だけどもさ。
私には人生を着飾りたい佳乃や増尾ってのも、かっこ悪いほどの寂しさの果てに出会ったことが大切で大切でたまらないってのも、ちょっとした一言で自身を取り戻せた被害者ってのも、受け入れて読めたなあ。
それがリアルなのか?というとわからないけれど。
私の感受性不足かもしれないが、ちくわ少女のシーンはいらないような気はしたが(笑)。
置き去りにされたこと、これがどれほどの心の傷だったのか。
それなのに「どっちも被害者にはなれんたい」って。
あの人は被害者なのだから自分は加害者なんだと思い込まなければならなかった人生なんて想像し難い。
悪人であるとの告白が逆に悪人ではないとの証のようだ。
それを汲み取ったからこそ光代は今までどおりの生活を選んだのだろうな。

この置き去りについて。
ちょっと前に、お菓子を残しただけで遊びに出かけた(日数忘れた)母親が戻ってきたら小さい子の方が死んでいて、6歳のお兄ちゃんを「お前が食べ物をちゃんとあげなかったからだ」と責めたという母親の裁判ありましたよね。
そこでお兄ちゃんが「僕がお菓子をわけなかったからです、お母さんは悪くないです」って言葉が取り上げられたらしいですよ。
このお兄ちゃんの言葉が本の内容とかぶって痛くて痛くてたまりません。
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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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