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本の感想
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サンフランシスコに住む日系アメリカ人の女子大生ルチアは、マフィアの遺産相続に巻き込まれやってもいない殺人事件の犯人として警察に追われる羽目になり日本へ逃げる。彼女を追うのが日本で一人のバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)沢木丈。警察、マフィアも加わった追跡劇の結末は…?

痛快!
著者の言葉に反して途中で栞をはさんでしまったが、それでも途絶えなかった疾走感、私はお気に入り。
「アリスの夜」「マリアの月」の中間に発行されたようでなんとなく納得。
日本でバウンティ・ハンターが認められた世界なのかな?と読み始めるもそんなことはなくて、沢木もきちんと公安警察に追われているのが話をややこしくさせると共にいいところ。
ルチアを本当に追っているのが警察ではないとわかってから沢木とルチアが心を寄せる具合がセンチメンタルすぎる気もするが、そこは二人の孤独と沢木が背負ってしまったものを考えるとありでかまわないと思う。
心に傷ありの男に弱いタイプなもので…(笑)。
細かいことを考えずにスピード感を楽しめます。
そして三上さんだなあと思わせる(3作しか読んでないくせに)ちょっぴり切なくも希望も消えないラストが待ってます。
最近知ったばかりだけれど、気になる作家さんになってしまった。
短編も書かれているようなので早く書籍化希望。

余談…HDDの先頭に寝かせたままの「24」S4を見始めたら、車で道を逆走して大混乱、という箇所がリンクしていて嬉しくなりました(笑)。
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画家の本庄敦史は、師匠の推薦で知的障害者更生施設「ユーカリ園」でアートワークの指導をすることになる。敦史はそこで、幼い頃に崖から転落した時の頭部損傷の後遺症で精神発達遅滞となった美少女(22歳)河合真理亜と出会う。言葉も話さず何の意思表示もしない真理亜が絵に触れたとたんに才能を発揮する。そんな真理亜の描いた一枚の絵が彼女の運命を大きく揺さぶることとなる。

「アリスの夜」も面白かったけれど、こちらはさらに面白い。
説明してるな~が拭えなかった登場人物の背景がこちらは自然。そして陰謀組織の暗躍ぶりも壮大だ。

事故によって真理亜はカメラアイという力を授かってしまい、事故の瞬間に見てしまったことが頭に焼き付いていることに悩まされ、またハイパー・グラフィアの発作(と言うのかな?)にも悩まされている。
それは敦史が絵に触れさせなければ表に出ることはなかったかもしれない。その深読み責任感以上の感情も敦史に芽生えてしまう。
真理亜は22歳だけどその無垢な様子から子どもにしか見えないようだし。
適役の狂気の追跡と同様、これは「アリスの夜」…?(笑)
そんなこともアートワークグループのみんなと絵を作成する盛り上がりと、事件の骨組みに結びついた後の怒涛の展開を読めばどうでもいいかな。
ただ、師匠の死はどうだろう?。敦史を信じていたことに変わりはないのだろうけれどそこに死を悟ってしまったことの影響を邪推したくなるもの。私だけですか(笑)。
あと気になるのは真理亜は22歳と言っておきながら、PSWの志帆が彼女に選んだ服のなんと幼いこと。かわいいのはわかるけどさ。
それとも無意識に敦史に対して予防線張ってたのか?それなら理解できる(笑)。
あ、今回もGPS機能付き携帯が役に立ってました。

真理亜が苦しむハイパー・グラフィアの症状、以前海外ドラマCSI:NYで作家になりたかった男が家の壁中に原稿を書いてしまうってのがあった。
奥さんに見つかると怒られるから光を当てないと見えないペンで書いてたな。
強いストレスが症状を重くするらしい。真理亜も焼き付いて離れない映像に苦しんだせいだったのかな。
アリスの夜
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ジャズバー経営に失敗した水原真彦は金貸しの裏にいるヤクザもののいいなり。芸能プロダクションの運転手をすることになるがその中には幼女売春の送迎も含まれていた。「商品」の一人アリスに心を乱され、ある日この世界から逃げ出そうと決意するが一人残すアリスが気掛かりになり連れて逃亡。そんなことが許されるはずもなく、ヤクザものは血眼になって真彦とアリスの行方を追う。

大元にある幼女売春の話には嫌悪するが、アリスに魅かれた真彦が手を出さないで懸命にアリスを助けようとしているのが救い。
逃亡劇のスピード感が効いているのもそのせいか。
一言で言っちゃえば、10歳の娘に本気で魅かれる真彦はロリコンなのかもしれないけれど、本当に守りたいものを見つけた彼の自堕落からの変身は認めてあげないと、という気にさせる。
最後の最後の決断もシスターの言葉通り、「あなたご自身が、そう思いになるのなら、その方がいいのかもしれませんね」。アリスが千鶴以外の誰でもなくなった時に会えばいいじゃないか!と思う。
愛する人の幸せを最優先させる真彦の成長を素直に受け止められる、そんなお話。
小説ならここで終わりだけれど、幼児の性的虐待はその当時は実感がなくても性行為がどんなものかを本当の意味でわかった時に影響が出ると聞いたことがある。
それを千鶴が乗り越えられて、それでもマーくんに会いたいと思ってくれるならそれが本当の再会になるのだと信じたい。

この本が出版されたのが2003年の3月。
振り切ったはずなのにすぐ近くまで追跡されている事を不思議に思いつつ、なかなか携帯電話に思い至らなかったあたりに技術の急速な進歩を感じる(笑)。
この頃はGPS機能付き携帯電話なんて一般人には思いつかなかったのか、と。
冒頭の真彦はリタリン依存症でその理由が「シャブは恐いから」。
でも日に30~40錠も飲んでる。依存性の強い薬のようで今は規制の対象となっているというのが実にリアルに伝わるエピソード。

あとは犬バカとしては犬の描かれ方が不満(笑)。

photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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