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本の感想
短劇
「短劇」
 [単行本]
 著者:坂木 司
 出版:光文社
 発売日:2008-12-17
 価格:¥ 1,785
 by ええもん屋.com

26編からなる短編集。
「いい話」の連載だったはずがどんどんブラックになってしまった、とあとがきで告白されています。
私はブラックな話は大好き。バリー・ユアグローとか。
でもこれはどうだろう?不思議な話ではあるものの、ブラックというには何かが邪魔をしているような気がする。
「先生と僕」で結構えげつない話を読んでいるので坂木さんの作風というわけでもないと思う。
「あるものを繰り返し登場させることで読んだ人に刷り込みをしかけた、目にするたび気になるだろう、くくくっ(大意)」とあとがきにあるが、あれ?私気にしてないよ(笑)。
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動物園の鳥 (創元クライム・クラブ)
「動物園の鳥 (創元クライム・クラブ)」
 [単行本]
 著者:坂木 司
 出版:東京創元社
 発売日:2004-03-23
 価格:¥ 1,470
 by ええもん屋.com

「青空の卵」「仔羊の巣」に続く完結編。
今回は長編で動物園に傷ついた猫が多数現れることへの疑問を解決していく。
そこに何の因果か、鳥井と坂木の関係がこうなったきっかけである中学時代のいじめっ子が事件のキーとなって登場。
今まで漠然といじめられていた鳥井、その機会を逃さずに友だちになった坂木ということしか語られなかったが、具体的にいじめっ子谷越が何をしたのか、その時坂木が何をして何をしなかったのかがわかる。
子どものいじめとは言い切れない世の中の縮図でもありますね。
「好きな人に好かれる努力はするけど嫌いな人に嫌われるのは気にしない。でも相手の言い分があってるかもしれないので遮断はしない」というようなことを登場人物の一人が言う。
向かい合って話をしていても言葉が通じてないと感じることのある昨今、こういう心向きは心がけたいけど私の心はそれほど大人ではないので困る(笑)。
三部作読み終えるのに長い時間がかかったけど読んでよかった、区切りがつきましたものね。
読んだから言えるのは、やはり心に痛いだけで好みとはちょっと違った。
自分には道徳の本のようで向き合うにはちょっと辛い。
人の心の大切さは伝わってくるけどなにせ語りすぎ。
読んで膨らませる前に追い討ちかけられるようで落ち着かないったらない。
シークレットトラックは読みたくなかったし。
読みやすいけどツライ、そんな本。
でも読んでいてそれだけ心が動いたってことはわかっていただけますでしょうか?(苦笑)
病んだ事件ばかりだった「先生と僕」の方が気持ちよく感じてしまうのはそういったことが関係しているのかも…?
仔羊の巣 (創元クライム・クラブ)
「仔羊の巣 (創元クライム・クラブ)」
 [単行本]
 著者:坂木 司
 出版:東京創元社
 発売日:2003-05
 価格:¥ 1,575
 by ええもん屋.com


安楽椅子探偵モノかと思って読んだ「青空の卵」の続編。
安楽椅子探偵というのも間違いではないけどこの坂木と鳥井のシリーズはミステリな部分よりも感情の部分の占める割合が大きい。
「青空の卵」を読んでからコレを読むまでに相当の時間が経っているのもそのせい。
私には登場人物全てがキレイすぎて眩しい。でも抱えてることは重い。
このアンバランスなところに苦しくなる。
でも読みたくないわけではない。
この微妙な感じをわかっていただけるでしょうか(笑)。
短編集だけども登場人物がさりげなく関わりをつなげて、他の話にも登場してくるのは好き。
それがみんなが期待しているようで不安でもある鳥井の世界が広がることそのものだから。
二作目のコレを読んで坂木と鳥井の関係になれたかと言えばそういうこともない。
でも今度は近いうちに完結編でもある三作目「動物園の鳥」を読むつもり。
先生と僕
双葉社
坂木 司(著)
発売日:2007-12
おすすめ度:4.0

大学生になったばかりの伊藤双葉は入学して最初の友達に強引に推理小説研究会に入会させられてしまう。本は好きだが人が殺される小説は読めない極度の恐がりの双葉は大弱り。ため息つきながら公園で推理小説を広げていると「高時給のアルバイトしない?」と中学生瀬川隼人に声をかけられる。それが「先生」隼人と「僕」双葉の出会いだった。

「僕」は双葉だろうけれど、設定が大学生だから「先生」は文字通り先生なのかと思っていたら意表を突かれるかたちで中学生の少年だった。
お勉強も優秀な隼人は家庭教師なんて必要ないがお母さんの安心を得るために気の合いそうな家庭教師を探していた。ミステリ好きの隼人には公園で乱歩を読んでる双葉が「運命の人」に見えたわけだ。
どのへんが先生なのかというと、推理小説研究会の経緯を知った隼人が双葉にも読めそうな本を指南してくれるというところ。
それだけではなく、行動を共にしているうちに出会う不思議な出来事を解決に導くという顔ももっている。
隼人は類稀な観察&推理力の持ち主。中学生にしては大人びているというか冷めている点は気になるけれど。情報のあふれた今、秀でた観察力があればそうなってしまうのかな。
その隼人の解決に大きく貢献しているのが見たものをそのまま覚えられるという双葉の能力。
写真を撮るように覚えたことを隼人が吟味、そして真相へという展開。
なるほど、やはり運命の人だったわけだ。
主人公二人の感じが同じ著者の「青空の卵」を思わせる部分もある。これは二人の関係が心に痛くて続きを読めないでいるがこちらは子どもらしさと大人びた思考が綯い交ぜになった状態を楽しめる。
大人びた隼人の子どもらしさを引き出すのが大学生の双葉というところがまた楽しい。これは当然続くのだろうな。
一つ気になったのは第1話でお互いの自己紹介時、双葉が記憶を披露する時の隼人の通知表。まだ中学生になったばかりなのに何故中学校の通知表があるのかな?後で鍵になるのかと思ってなかなか集中できなかったよ(笑)。

ちょっとネタバレ。






古本屋のオヤジが認知症を装って「仕入れ」に来るという知人の書店員の話と第1話が重なった。
先に新聞を買って小脇に挟んでそこに「仕入れ品」を隠すらしい。
認知症だったら隠すなんてことに気は回らんでしょ。
この本では古本屋に天罰が下ったけれど件の古本屋は代替わりしても続いているというのが憎たらしい。
青空の卵 (創元推理文庫)
坂木 司
東京創元社
売り上げランキング: 13443

坂木司には引きこもり状態の友人鳥井真一がいる。
放っておくと家から出ないままなのでまめに家に行き、外に連れ出している。
そんな坂木が見聞きした不思議なことを話すと鳥井は真実を見つけ出してくれる。

殺伐としたものも好んで読みますが、安楽椅子探偵や死人が出ない日常の謎ものも結構好き。
これも裏表紙の説明を読んでそういったジャンルだと思って読んだ。

日常かというとそれよりは事件っぽいけれど、確かに謎解きものでもある。
でもメインは坂木と鳥井の物語。
どうして鳥井が精神のバランスを壊しやすく引きこもり状態なのか、どうして坂木は鳥井を第一に考えているのか、こっちの方が気になり謎解きはおまけに感じる。
子どものころに負った心の傷で大人の思考と子どもの感情を同時に持ってしまったアンバランスさ。
それを全部受け止めてやろうと決めた坂木の決意。
受け止めてやるだけではなく、いずれはやってくるであろう、やってこなければならない別れの時に向けての準備もする坂木。
でもそれを想うと涙する…。
そう坂木は泣く。
人のことを想って泣く。
これだけ純な人間はいないんじゃないのか。
鳥井のために勤務形態に融通が利く会社に就職している。
こんなヤツいないよ!と胸元が痒くなってくる。
一方で、この二人の関係を全部肯定はできないけれど、小説なんだもの、善意の懐を信じたっていいじゃないか!という気もする。

心にのしかかってくる部分をちょっと引用。

僕は時々、恐いことを考える。
もし、鳥井の身体がどこか不自由だったなら。
もし、自分のせいで彼がそうなっていたのだとしたら。
誰はばかることのない、それはそれで立派な大義名分が先に立って。
僕は一生、鳥井のことを気にしながら生きていってもいいんじゃないのかと。

結構大きな手術をする時、逆のことを考えた。
これを聞いたら離れていかないかもしれない人のことを。
だから私は伝えなかった。
後日の再会で、あの時伝えなくてよかったのだと思えた。

そんなこんなでミステリじゃなくて主人公二人の周辺から何かを感じてしまう小説かな?という印象。
鳥井が独り立ちできるか?の3部作になっているようなのでそれを見届けたい気もする。
でも思わぬところで胸の内ををえぐられる可能性もあるので体調と相談する必要アリ(笑)。
photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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