「水の中の犬」でその男気に涙した矢能を中心にした物語。
話は独立しているので「水の中の犬」を読んでいなくとも入っていけるが、読んでいると泣き所が確実に増える(笑)。
依頼人になるはずの男を殺された矢能が、事の真相を嗅ぎつけて選んだというか選ばせた道、犯人であるはずの数馬という青年が真相を知って選んだ道、ここが山場だったなあ。墓地で矢能と数馬は確かに心が重なっていたはずだもの。
両者が重なってからの作戦はちょっぴりできすぎの気がするけど。
テレビや人が何と言おうと「おまえが感じたことが正しい」と言い切る矢能にやっぱり惹かれる。
殺人マシーンのように報道された数馬だったが、その生い立ち、短く畳み掛けるような文体が数馬の寂しさを強調しているようにも感じられ、ここも私には好きなところだった。
「わたしが感じたことだけを信じよう」と思える理恵はきっと数馬の心に温かみを添えてくれる存在になったはず、と連想もできるし。
矢能を主人公にした話は続くのだろうか。
大切なものがわかってしまって、これからどうなっていくのか興味もあるけど見たくないような気もする(笑)。
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