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本の感想
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追想五断章
「追想五断章」
 [単行本]
 著者:米澤 穂信
 出版:集英社
 発売日:2009-08
 価格:¥ 1,365
 by ええもん屋.com

見つけることを依頼された五編の小説、依頼主の手元にはそれぞれの結末、その本当の組み合わせがわかった時に二十数年前の事件の真相が見えてくるという、とても不思議であり興味深くもあるお話。
見つけ出された小説ひとつひとつの後味の悪さと、現実の結末が私には重なっているように見え、そこにもぐっときた。
この依頼に出会わなければ芳光の人生は違っていたはず、そう強く思う。
花が好きではない、咲くたびにまた一年が過ぎてしまったのだと、その一年を重苦しく感じる芳光の心が私にも痛かった。
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儚い羊たちの祝宴
「儚い羊たちの祝宴」
 [単行本]
 著者:米澤 穂信
 出版:新潮社
 発売日:2008-11
 価格:¥ 1,470
 by ええもん屋.com

タイトル作をラストに据えた五編からなる短編集。
読書倶楽部「バベルの会」がすべてを結びつけるという微妙な役割を担っている。
一話目「身内に不幸がありまして」で今まで抱いていた米澤さんのイメージと違うなと感じた。
独白文というかたちで進むことも、旧家の館という舞台も。
一話目だけに限らず、二話目、三話目…と統一された進み方なので、これは短編集というよりも英語副題「The Babel Clib Chronicle」という一冊の本というのがふさわしいと思える。
どの話も終盤の種明かしというか露見する真相に唸っていた。
そしたら「ラスト一行の衝撃に徹底的にこだわった連作集」というのが宣伝文句だったと後から知った(帯にあったの?こういう時図書館派は損だ)。
確かにラスト一行は決定的な言葉だけれど、そこにたどり着くまでに「まさか、まさか」と気持ちを昂らせてくれる雰囲気がお見事なのだと思う。
「山荘秘聞」だけは本当にラスト一行でびっくりしたけど(笑)。これも伏線はたくさん張られていたのだが。
どれも悪意と愛情と残酷さのなんともいえない混ざり具合がたいへん好みでした。

旧家で館、ということで佐々木丸美さんの小説の数々が頭に浮かんでしまった(学生の頃、マルミストだった期間あり・笑)。全然世界は違うのですけども。
私が読んだ頃は講談社文庫だったけど創元から復刊されているのですね。
とりあえず、「館」のつくものを(笑)。

崖の館 (創元推理文庫)
「崖の館 (創元推理文庫)」
 [文庫]
 著者:佐々木 丸美
 出版:東京創元社
 発売日:2006-12-21
 価格:¥ 680
 by ええもん屋.com
水に描かれた館 (創元推理文庫)
「水に描かれた館 (創元推理文庫)」
 [文庫]
 著者:佐々木 丸美
 出版:東京創元社
 発売日:2007-02-28
 価格:¥ 780
夢館 (創元推理文庫)
「夢館 (創元推理文庫)」
 [文庫]
 著者:佐々木 丸美
 出版:東京創元社
 発売日:2007-04
 価格:¥ 693

インシテミル
インシテミル
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米澤 穂信
文藝春秋
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時給11万2千円という法外な求人広告に吸い寄せられた男女12人。仕事は「暗鬼館」でルールに従い一日中行動を監視されながら7日間を過ごすというもの。一見お気楽そうだが、それぞれの部屋には殺傷能力のある武器が与えられ、監獄・霊安室といった部屋までが存在する。主催者の狙いはいったい…?そしてバイト仲間たちは無事に7日間を過ごせるのか…?

以下、内容を連想させる部分もあります



暗鬼館のルールというのが曲者。夜には出歩いちゃいけないなどというのはまあ理解できる。しかし時給以外に加算されるボーナスについてのルールが問題。
人を殺せば犯人ボーナスとして報酬2倍、正しい犯人を指摘できれば報酬3倍だもの。事件が起きた場合の解決についても、事実かどうかではなくその場のメンバーの半数の同意が得られるかどうかで決まる。正しいかどうかは問題ではないというのが恐いところ。
事件が何も起きなければ問題ない、と大人しく7日間を過ごそうと意見がまとまったのに3日めに一人が死体となって発見されたことからこのルールの重みが増す。
そこにいない自分も疑心暗鬼になってくる。どう落ち着くんだ?と先がとにかく気になる。そしてそうなったか、と(笑)。
彼女のある意味異常なところを終始疑いの目で見ていたけれど、あれは別物の異常さであったことにも…!
武器に添えられているメモランダムも古典ミステリに詳しければいっそう楽しめたのかな。
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)
米澤 穂信
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「犬はどこだ」が気に入った米澤さん。

1991年、偶然に雨宿りをする外国人少女マーヤと出会ってしまった守屋とセンドー。
乗りかかった船とばかりにホームステイ先を世話し、密な2ヶ月を過ごす。
マーヤの帰国する先は紛争の只中のユーゴスラビア。
紛争が激しくなる中彼女の身を案じるが、守屋たちは彼女がユーゴスラビアのどこに帰国したのかわからない。
安否を確認したい一心で当時の日記やユーゴ紛争の資料から行方を突き止めようとするが…。

鈍感なのにのめり込む守屋が好きにはなれない。
それはきっと彼がリアル高校生だからかも。
自分も含め、この年代って良くも悪くもそんな感じだった気がする。
マーヤは恋愛感情というより、彼にのめり込む何かを与えた存在なんだろうな。
それをすべて察して口を閉ざし続けたセンドーも好きなタイプではないが、彼女はマーヤを日本の友人として受け止めていたんだ、と痛感させられる。
誰も彼もが不器用な高校生で、誤解も過信も高校生の特権なのかもしれない。
でもそこに投げ込まれたのがユーゴの紛争という一般的な高校生ならまず触れ合えないような話題。
自分の手にはどうすることもできない、でも想い出にするにはあまりにも酷な現実。
メインストーリーは胸に迫るものがあったのですが、マーヤが守屋たちにぶつける疑問がピンとこなかったなあ。
それが彼女の戻った先を推理させる手がかりなんだけどね。
犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)
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一見すると青春ミステリのようなのに、後味の悪さが興味深かった「ボトルネック」しか読んだことない米澤さん。
理由はシリーズ物の順番を把握してないから(笑)。
これはノンシリーズなので大丈夫。でも読後にシリーズ化希望。

都会でのサラリーマン生活を病気で断念した紺屋長一郎。
故郷に戻るとすぐに病状は安定、何か始めようと選んだ仕事はペット探偵業「紺屋S&R」。
開設早々先輩の紹介として仕事が舞い込むのは有り難いが、何故か人探しと古文書解読。
おまけに高校の後輩ハンペーが押し掛け探偵としてやってくる。
古文書解読をハンペーに任せ、紺屋は人探し、うまく分担して事務所が船出したように見えた。
しかし、この2件が微妙な繋がりを見せ始め…。

こうまとめてしまうと、少し年齢の上がった青春ミステリのよう。
しかしやはり米澤さんだ。
失踪女性桐子が何故失踪したのかその理由が見えてきた時、当初想像し得なかった裏が見えてくる。
退職、引越し、里帰りが思うところあってというよりも全て計算されてのこと。
それに気づいた紺屋は「依頼を達成させること」を最優先させる。
問題発生→退職→故郷、二人は似通った境遇。
依頼された以上のものが芽生えても不思議はなかったかも。

ちゃらちゃらしてそうだけれど意外と使えるハンペー、ネット捜査に協力してくれる紺屋のチャット仲間、口は悪いが兄を認めている紺屋の妹等まわりのキャラクターもいい感じ。
東京から桐子失踪事件のアドバイス(?)にきた探偵の間抜けぶりも見事。
シリーズ化されてもいいかもしれない。
でもあの町であんまり事件が頻発するのは不自然か。

今回、私の読書スピードの遅い理由がわかった気がする。
東京から来た探偵がハンペーを紺屋と間違えて桐子事件から手を引かせようと「この件、君では役不足だ。怪我をしないうちに、手を引いた方がいい」と言い出すシーン。
この「役不足」に引っ掛かって進めなくなってしまった。
この使い方だと「君はこの役には力が足りない」だけれど、本来は役が物足りない時に使う言葉。
あれ〜間違っちゃってるよ、誰も気づかなかったのかな〜とここでしばしグチグチ。
しかしもうちょっと読めば同ページ内でハンペーが用法が間違ってる、と指摘してる。
彼を使える!と思った瞬間だ(笑)。
意味のわからない言葉だって確実にあるくせに、たまたま自分が知ってることに出会うとこだわってしまう、困った本読みだ。
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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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