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本の感想
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無理
「無理」
 [単行本]
 著者:奥田 英朗
 出版:文藝春秋
 発売日:2009-09-29
 価格:¥ 1,995
 by ええもん屋.com

「邪魔」、「最悪」を思わせる、無関係と思われる人々の微妙なリンクにざわざわさせられる群像劇。
市町村合併でできた「ゆめの」という市が舞台。
市役所の生活保護担当、東京の大学を夢見る女子高校生、スーパーの万引き保安員、詐欺商法に勤しむ元暴走族青年、親の地盤を引き継いだ二世市会議員、彼らを取り巻く、良くも悪くも中途半端な田舎町の設定が苦しい。
無理があるという意味ではなく、容易に想像できる世界であり、ふだん自分が見たくない、知りたくない、と目を逸らしていることが重いから。
「邪魔」や「最悪」は、もう少しドラマとして、ありそうな世界として読めたと記憶しているけれど、これは実際にあるだろうと思われるほど。
こんなに苦しくさせ、収まりの仕方を心配させておいての、あっけない多重事故というオチは一見すっきりのようで、その後を想像するとさらに一つ小説ができあがりそう…。
あんなに待ち望んでいたテーマの小説なのに、とにかく辛かった。
それだけ切羽詰った状況や背景の書き込みが強烈だったということか。
表紙のタイヤ跡にも意味があったとはね。
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用もないのに
「用もないのに」
 [単行本]
 著者:奥田 英朗
 出版:文藝春秋
 発売日:2009-05
 by ええもん屋.com

奥田さんがあちこち出かけたお話。
「野球の国」や「泳いで帰れ」で野球への情熱は十分に感じていたので、北京オリンピックでの日本野球チームの結果を知った時「今度は泳げない距離でもないね、奥田さん」と私でさえ思っていたら、案の定、北京オリンピック野球観戦記のタイトルが「再び、泳いで帰れ」 (笑)。心が重なったようでとても嬉しい。
初体験のNYや大人の遠足話も面白かったけれど、野球のことを書いている方が生き生きとして感じる。自分もわかる話題だからでしょうか?
はしゃぎ、惑い、感動し、チャーミングなものを愛する奥田さんが一番チャーミングでありました。
棒球結構危険也!(笑)

野球の国 (光文社文庫)
「野球の国 (光文社文庫)」
 [文庫]
 著者:奥田 英朗
 出版:光文社
 発売日:2005-03-10
 by ええもん屋.com
泳いで帰れ (光文社文庫)
「泳いで帰れ (光文社文庫)」
 [文庫]
 著者:奥田 英朗
 出版:光文社
 発売日:2008-07-10


オリンピックの身代金
「オリンピックの身代金」
 [単行本]
 著者:奥田 英朗
 出版:角川グループパブリッシング
 発売日:2008-11-28
 価格:¥ 1,890
 by ええもん屋.com
犯人、その友人、憧れる女性、警察、と視点や時間が行ったり来たりする好みの展開。
オリンピックを人質に身代金を要求されるという大事件なのに、オリンピックという一つの目標に向かった心を消沈させないために事件をひた隠す警察。
隠されて表沙汰にはならなかっただけで本当にあったのではないか、これはそのドキュメントなのではないか、と錯覚しそうになる。
犯人島崎は兄の死をきっかけにオリンピックで華やかな東京と、遺骨を持って帰った故郷の貧しさ、この差に疑問を感じてテロリストとなっていく。
しかしそこに滾るものが感じられない。
現実を見てしまった、知ってしまったから、とそんなふうで、そこまでする精神の高揚が感じられない。
むしろヒロポンで気持ちが高めらた結果のような気がしてくる。
だからこその犯人の恐ろしさなのかもしれない。
最後に島崎からの視点がないのもそれを裏づけしているように見えてしまう。
C調テレビ局社員須賀の、顔見知り程度だった犯人島崎を必死に気にかける様子の方に体温を感じたなあ。

奥田さんを好きになったのは「最悪」や「邪魔」。
伊良部シリーズ等は軽めで楽しく読めるもののどこか物足りなさを感じていたのでたいへん満足の一冊でありました。
家日和
家日和
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奥田 英朗
集英社
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突飛なことではなく(小説家は違うけれど)、どれもが起こりえそうな6編の家小説。

「サニーデイ」、「家へおいでよ」、「グレープフルーツ・モンスター」は、このままだと伊良部先生のところに行かないとならないかも、と心配になる。
が、こちらの主人公はみなさん自分で乗り越えてます。
伊良部シリーズもそうともいえる(笑)。

一番のお気に入りは「ここが青山」かな。
会社が倒産した主人公が奥さんと生活が逆転する話。
まわりは同情の目で見るものの、本人たちにはこれがしっくりきている。
もちろん、初めて体験する家事に主人公は悪戦苦闘するが、それを乗り越える術を自分で見つけられるんだよね。
本で勉強し、魚の焼き方も実践で学ぶ。
この姿勢が見事です。
身近な人は聞けばいいと思ってる人ばっかりなので。
風呂場のカビとり剤の恐怖を奥田さんもわかってくれているのだな、と思うと感動の涙すら浮かんでくる(笑)。

「家においでよ」もいいな〜。
わくわくしながらオーディオ機器、家具、家電をそろえていく。
妻に出て行かれたという悲壮感が微塵もない。
楽しさしか伝わってこない。
楽しすぎて買い物が止まらなくなるのではないかと心配してしまうほどだ。

どの話もこのままだと壊れちゃうんだろうな、という予感がある。
でもこの本の登場人物はみんな、ちょっとおかしなことになっても家を壊すことなくまた家として、家族として歩んでいける。
ほんの小さなきっかけであっちかこっちか紙一重なのかな。
町長選挙
町長選挙
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奥田 英朗
文藝春秋
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精神科医伊良部シリーズ。
図書館本ではないのでとことん寝かせてしまい、ようやく読了。
無条件で楽しいのですが気になることも。

三つの短編で、プロ野球チームを持つ横暴が売りの田辺満男(ナベマン)、若くしてIT業界で成功し傍若無人な買収劇が注目の注安保貴(アンポンマン)、宝塚出身で家庭の匂いをさせないアンチエイジングに取り付かれる四十代の女優白木カオル、がそれぞれ患者となっている。
これは誰でも思いつくあの人たちがモデルですよね。
女優の話はともかく、後の二人の話は現実そのままじゃないですか。
あの騒動の裏にはこんなこともあったのかもしれない、と思いを巡らせて楽しめるけれどあまりにも題材によりかかっているような気がしないでもない。
そう思ってしまうと伊良部が医者っぽいことを言ってるとか(どのへんかは不明・笑)、マユミの私生活は知りたくないとか、出版社の依頼だったのかな、とか…しょんぼりしてくる。

そんなところへタイトルにもなっている「町長選挙」。
伊良部2ヶ月だけの赴任先の離島は町長選挙の真っ最中。
都庁職員で3年間の離島研修中の宮崎良平は買収の波に飲み込まれてあっぷあっぷ。
そんなことお構いなしの伊良部がまた火に油を注いで…ああ、これですよ伊良部は。
なんか最後でスッキリした。
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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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