今は引退しているエルダー元警部。
昔逮捕した少女誘拐殺人事件の犯人少年の一人が仮釈放される。
このことを機に解決していなかった誘拐事件を個人的に捜査しなおすことを決意。
釈放された少年だった男ドナルドは突然姿を消す。
行方を追ううちに新たな誘拐事件が発生。遺体が発見される不幸な結果に。
と思ったら今度はエルダーの娘の行方がわからなくなる。
解決されていない事件もこの二つもドナルドが関与しているのか?
久しぶりに読んだ犯罪小説。重かった。
でもこういうのが読みたかった。重くて暗いの。救いがあるようでない。
逃走したドナルドもエルダーも家庭に大きな問題あり。
ドナルドがかつて関わった事件や新たに展開される事件も酷いが、エルダーが解決しようと乗り出した14年前の少女行方不明事件。
この結末が酷い。
行方不明になったのは誘拐ではなく、自分から失踪していた。
実の父の用意してくれたチケットに飛びついて外国へ。
捜査の段階で旦那の子どもではないってことを明かさないのもすごいが、実父の「お母さんにも内緒でおいで」の言葉とそれを信じて実行してしまう娘、これもすごい。
実父は「お母さんもそのうち忘れて立ち直るよ」とか言うがそんなことなかったと知り涙する娘。
でも実父の存在を打ち明けなかったあたり、実父の言葉が正しいんじゃないか?と思えてくる。
単調に思えるほど張りつめっぱなしで疲れたが、読み応えという点からすると十分。
副次的に刑務所ってところは、犯罪少年の更生とは、と考えずにはいられなくなる。
だって10年以上も刑務所にいたって更生できないじゃないの。
PR
ドーナツ屋の店主、ヴィンス・キャムデン。
4年前ひょっこりスポーケンの街に現れ、店休日以外早朝からドーナツを作る毎日。
地道に暮らしているようでありながら実は偽造カード、麻薬の密売といった裏稼業で忙しい。
そんなある日、自分の生活に探りを入れてくるヤツが現れる。
裏の仕事をのっとり、命までも奪おうとしている。
これは4年前のツケなのか?
疑心暗鬼になり、過去を清算しようと立ち上がる。
ヴィンス・キャムデンは証人保護プログラムでつくられた男。
子どものころからの犯罪者、でもケチな借金がらみくらいで何故証人保護プログラム?という疑問は後に明かされる。
新しい人生をもらっても同じ事を繰り返していたヴィンス。
しかし命を狙われ、過去に対峙したことから自分が本当に求めていたことに気付く。
時は1980年の大統領選。
初めて手にした選挙権の重みとやり直しの人生。
ヴィンスが一番選挙を真剣に考えているというのは田舎町ってことなのかな?
まったくの余談。
T・J・パーカーの写真、変な人形を持っているのしか見たことがなかった。
そしたらこのジェス・ウォルターも同じのを持ってるじゃないですか。
パーカーさんの趣味の人形なわけじゃなくて
アメリカ探偵作家クラブ賞の受賞記念のトロフィーなのね。
注意力が足りませんで失礼いたしました(笑)
死ぬほどいい女」「深夜のベルボーイ」「取るに足らない殺人」等は読んでいるのにこれはなぜか未読。
「このミス」1位で一番有名なのに。
人口1280人の田舎町の保安官ニック。
うるさい奥さんと知能の足りないその弟(?)が家では彼を追い立てる。
田舎町の保安官なので仕事はそう忙しいわけではない。
揉め事の処理くらいであとはだらだらと暮らし、
愛人との密会に精を出すという毎日。
ぼんくら保安官なわけではなく、悪事にのめり込んでいくイカレタ保安官。
やっかいなヤツラを始末して、それを友人保安官に罪をなすりつける、
保安官の対立候補の悪い噂を蔓延させる、
うるさい女房と弟、愛人までをも片付けようとする。
まあ、悪いことに頭はフル回転。負にパワフル。
この転げ方、とても楽しませてくれる。
でも壊れた男には壊れた結末が待っているわけだ。
保安官対立候補の悪い噂が流布していくのがとても好き。
ニックが何かを言うわけじゃない。
「あいつの噂は…」って言うだけ。
そうすると後はみんなが勝手に内容を考えてくれる。
いやあ、出てくるわ出てくるわ、極悪非道な行いが。
しかもどれも真実味ゼロ。
それでも広まるという噂の恐ろしさ。
またトンプスン熱が再発しそう。
どれも人間の暗黒部分なんだけれど、読み出すと止まらなくなるリズムも好き。
5人の女性警官それぞれを中心に語られる10篇の物語。
ハヤカワ・ポケミスなので警察小説かと思うが実はそれぞれの女性の物語。
エンタメ系の小説ばかり読んでいるせいか初めはとっつきにくかった。
それが読み進むうちに連れて行かれる世界はなんともいえない。
みなまで語らぬ美しさ、とでもいうのかな。
行間から伝わってくるものがとても大切。
こうやって語るのも野暮なくらい。
今、警察・消防・救命士ドラマ「サード・ウォッチ」を見ている。
女性警官ヨーカスの発言に首を傾げ始める今日この頃でしたが、
この本を読んだ後ではまた違った目で見守りたい気もしてきたな。
あまりにも有名な本。
それ故に図書館ではキレイでないし、昔からあるので字も小さい(何歳だ?)と、読みたかったけれど変な理由で敬遠してきた本。
それが先日図書館に新版があるじゃありませんか。
翻訳の仕事をする34歳独身、ヒルデガルデ。
戦争で身内を亡くし天涯孤独。
彼女は新聞の交際相手募集欄に目を走らせ、金持ちとの結婚を夢見ている。
そんな時にこの上ない良縁の広告を発見する。
当方、莫大ナ資産アリ、良縁求ム。ナルベクハはんぶるく出身ノ未婚ノ方ヲ望ム。世間ヲ知リ、家族係累ナク、ゼイタクナ暮ラシニ適シ、旅行ノ好キナコト。感傷的おーるどみす、暗愚ナ人形ハオ断ワリ
この広告に応募し、話は好転し富豪と結婚。
夢のような生活が待っているはずだったが…
書かれたのが1956年、50年も前のこと。
なので警察の捜査の方法には技術的に着目不可能なこともあるかもしれない。
それに加えて「足での捜査」にも緩みが感じられる。
これが当時の範囲なのかな。
さらに当時の法律の規定なのか、それとも気にする人もいなかったのか、今では重大な欠点となりうることがポイントになっていたりする。
しかし、これらを脇に避けるほどの話の転がり具合。
孤独さが彼女にすがらせたもの、それが哀れ。
知的なはずの彼女が何故?と一気読み。
共謀者と信じていた人物との対峙で露わになる愚かさがまた哀れ。
現在ではこの犯罪計画は成立しない。
法的なこともあるし、声門分析やDNA鑑定等の捜査技術の進歩もあるから。
それでも引き込まれる、魅力的な本でした。
追記
「わらの女」で検索すると出るわ出るわ、昼ドラの話。
全く知らなかったが今フジテレビでやっている昼ドラはこれを基にしているとか。
新版が出るには理由があったのね。