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本の感想
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蜂の巣にキス (創元推理文庫)
「蜂の巣にキス (創元推理文庫)」
 [文庫]
 著者:ジョナサン・キャロル
 出版:東京創元社
 発売日:2006-04-22
 価格:¥ 903
 by ええもん屋.com

スランプ中の作家サム。
ふとしたはずみで故郷を訪れ、ここで自分がすごい経験をしていたことを思い出す。
30年前、自身が少女ポーリンの遺体の第一発見者だったのだ。
この事件について書くことでスランプ脱出をはかろうと決意する。
そして執筆のため、事件を見直していく。

ポーリン事件の真相をめぐるミステリ。
それよりも恐いのがサムの熱烈なファンで思いを遂げるヴェロニカ。
事件の真相よりもヴェロニカの行動が気になって仕方ない。
だってわかりやすく言うとストーカーでしょ。
無理矢理サムの仕事のパートナーになってくるし、拒まれるとアレだし。
ヴェロニカの目的が最後までわからなかった。
ただサムに自分を好きでいてもらいたくて、役に立ちたくてってそれだけ。
サムも彼女が恐いけれど、魅力を感じずにはいられないでいる。

ポーリン事件とそれを取り巻く謎の真相は明らかにされるが、
「あいつにそんなことする力が残っていたのか?」という疑問は残る。
謎解きミステリというよりも、
登場人物の心情にいちいち反応してしまうのでした。
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幽閉
「幽閉」
 [単行本]
 著者:アメリー ノトン
 出版:中央公論新社
 発売日:2004-12
 価格:¥ 1,890
 by ええもん屋.com

外界から遮断された島で生活する老人船長と孤児。
そこに孤児の世話に看護師が呼ばれる。
看護師は船長と孤児の関係に疑問をもつ。
やがて船長の口から真実が告白される…。

孤児といっても拾われた時点でもう18歳。物語上では23歳。
孤児というのはどうかと思うが。
船長は性格が破綻している。
若い娘を騙して自分が恩人となり、実質的に彼女を支配下においているのだから。
しかも、彼女が初めてではない。過去にも同じことをしている。
その告白を聞かされた看護師が正義感を振りかざして彼女を救い出そうとするのだが…。

ここから結末へと向かうのに、著者は二通りのエンディングを用意している。
一つは勧善懲悪ものとして、船長が自分を悔い、監禁していた彼女に遺産を残して死ぬ。
そして彼女は看護師と共にその遺産で島を出て暮らしていく。
もう一つは島に留まるのだが、その過程が歪んでいる。
真実を話されてしまったと思った船長が投身自殺をするが、実は看護師は告げていない。
それどころか看護師が船長の立場に変わっただけ。
監禁されていた娘に真実を告げず、50年、年老いるまで一緒に暮らす。
最後の最後に船長のしたこと、自分のしたことを告白する。
一つ目のエンディングは生ぬるい感じがしたから、二つ目の方がいいかなとも思う。
でも、こっちもなんだかなあ…。

この著者の本 殺人者の健康法 のタイトルに魅かれて、図書館に探しに行ったがなかったので借りてみたのだが…。
保留かな。
クライム・マシン (晶文社ミステリ)
「クライム・マシン (晶文社ミステリ)」
 [単行本]
 著者:ジャック リッチー
 出版:晶文社
 発売日:2005-09
 価格:¥ 2,520
 by ええもん屋.com

2006年版の「このミス」海外篇で1位だった本。
長編を読む気力がないので、「短編集なら…」と借りてみた。
短編ならスレッサーがお気に入りだったが、また違った趣でとても面白かった。
病院の待ち時間というのは時間だけはあるけれど、読書には適していない。
前を人はたくさん通るし、いつ自分の番号が表示されるかと思うと気が気でないし(新しい番号が出るときは音で知らせてくれるけれど)。
でもこの本は正解だった。
短編なので背後関係を無駄に探ることもなく、そのまま読めたから。
面白いというのが一番の理由だけど。
350編も短編を書いているらしいので、読んでみたい。
でも米国で生前に1冊、死後に3冊しか出版されていないとか。
もっと読める日はくるのだろうか。
最近、本を読むのがちょっとつらかったが、これで復活できそうな気がしてきた。
怪盗ルビィ・マーチンスン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハヤカワ名作コレクション)
「怪盗ルビィ・マーチンスン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハヤカワ名作コレクション)」
 [文庫]
 著者:ヘンリイ・スレッサー
 出版:早川書房
 発売日:2005-07-21
 価格:¥ 756
 by ええもん屋.com

いつも悪だくみに頭を回転させているルビイ・マーチンスン。
犯行計画を聞かされ片棒を担がされるその従兄弟。
犯行計画は強盗、引ったくり、詐欺、(少年)野球賭博…と様々。
すごい悪人を想像するけれど会計士という仕事をちゃんと勤めている。
さらに彼を憎めなくしているのは、ひとつも成功しないということ。
おまけに犯行のために道具を買ったりと根回しに投資をするから赤字である。
とても見合わない。
それなのに次から次へと計画を立てては失敗する。その繰り返し。
読んでいてくすくすっとしてしまう。
たとえていうなら、大掛かりな子供のいたずらかな。
だから楽しいんだろうな。いつも頭の中がフル回転。
計画することが楽しいからやめられないんだろうね。
なんともほのぼのする犯罪小説。

同じ作者の「うまい犯罪、しゃれた殺人」という本も以前読んだ。
どれもひねりが効いていて楽しめる。
このタイトル通りにしゃれている。
スレッサーの本、もっと読みたいなあ。
死せる少女たちの家〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
「死せる少女たちの家〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)」
 [文庫]
 著者:スティーヴン ドビンズ
 出版:早川書房
 発売日:2000-04
 価格:¥ 714
 by ええもん屋.com
死せる少女たちの家〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
「死せる少女たちの家〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)」
 [文庫]
 著者:スティーヴン ドビンズ
 出版:早川書房
 発売日:2000-04
 価格:¥ 714

たまたま図書館で借りてきたら、『本の雑誌10月号』の特集『がんばれ、翻訳ミステリー』で嫌ミステリー6作のなかのひとつにあげられていた。
借りたのが先だから偶然。
普通の郊外の町で女性の殺害事件がおこり、犯人もわからず疑心暗鬼になっているところへ今度は少女の行方不明事件が。
そこに生活する人々が知るともなしにお互いの生活を知っているような町である。
なのに犯行は外部のものとは考えられず、町の人みんながお互いを値踏みするように探り出す。
それまでとりたてて異常扱いしていなかったことに対して噛み付いていくようになる。
同性愛者、異人種、売女の息子など。
疑うだけじゃなく徒党を組んで攻撃的になっていく。
集団ヒステリー状態か。
ストーリーはミステリなんだから犯人探しで、猟奇的な犯人が恐ろしいのは当然だけれど、それよりも暴走していく共同体である町が恐い。

この小説を読んで思い出したのが、やはり一人の少女の殺害事件をきっかけに町の醜い部分があらわになっていくヒラリー・ウォーの「この町の誰かが」。
田舎とも都市ともいえないごく普通で、秘密のもてない町ということもどこか似ている。

読後に爽快感なんてないけれど、一回読んでおいたほうがいい気がする。
嫌ミステリーとはよく言ったもの。

この町の誰かが (創元推理文庫)
「この町の誰かが (創元推理文庫)」
 [文庫]
 著者:ヒラリー ウォー
 出版:東京創元社
 発売日:1999-09
 価格:¥ 777
 by ええもん屋.com


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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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