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本の感想
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ルシアナ・Bの緩慢なる死 (扶桑社ミステリー)
「ルシアナ・Bの緩慢なる死 (扶桑社ミステリー)」
 [文庫]
 著者:ギジェルモ・マルティネス
 出版:扶桑社
 発売日:2009-06-27
 価格:¥ 970
 by ええもん屋.com

私は海外ドラマ好き
加入しているケーブルテレビでNHKのBSはもちろん、FOX、Super!dramaTV、AXN、WOWOW、ミステリチャンネル…といろいろ見てます。
中でもミステリチャンネルはヨーロッパドラマも積極的に放送してくれるのでかなり好き。
そのミステリチャンネルのプレゼントで当選したのですよ、この本は。
それだけで面白さ何割かアップ(笑)。
ちなみに、ミステリチャンネルはこの10月からAXNのグループになってAXNミステリーと局名変更になる。
他局とは少し違う番組選びを貫いてくれるなら大歓迎。
親が大きくなったといことは予算も増えるかも?とヨコシマな期待もしてるし(笑)。

作家の「私」がタイピストとして1ヶ月だけ雇ったルシアナが10年後に電話をかけてきて「相次ぐ近親者の死亡事件の背後にはある有名作家クロステルがいる、自分の身も危ない」と訴える。
「私」はルシアナとクロステルの間に何があったのか聞かされ、この話に巻き込まれていくことになる。

帯に「相次ぐ不審死、ちらつく大作家の影。アルゼンチン発、衝撃のメタミステリー!」とあるのですが、私、正直メタミステリの意味がわかってませんので、ちょっと調べる(笑)。

なるほど。

元々、一つの事柄を多方面から見てその印象の違いを見せるという話は好き。
自分かわいさの脚色、ヒートアップした陰口等、どす黒い内面が見えてくるような気がするから。
この本も、そういう両者の言い分を聞いて「私」が解決を見出すのかと思ったら違いました。
「私」は両者の言い分の中であっぷあっぷ。
そこにクロステルの口から最悪の悲劇の可能性が示唆され「私」は溺死寸前。
ルシアナが病的罪悪感に苛まれているのでは…?と考えると一つ一つの事件が見事に符合してくるのです。
が、「私」は溺れなかった。
突然水が引き、クロステルが語ったものとは別の可能性が見えてきたのでした。
それは酷く後味悪く、溺れた方が楽だったかもとさえ思える。
それが真相かどうかが明示されるわけではないが。
復讐とは、罪悪感とは、と唸り、ミステリというよりは心理サスペンスとして堪能しました。
ミステリチャンネルさん、どうもありがとう!
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ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:スティーグ・ラーソン
 出版:早川書房
 発売日:2008-12-11
 価格:¥ 1,700
 by ええもん屋.com
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:スティーグ・ラーソン
 出版:早川書房
 発売日:2008-12-11
 価格:¥ 1,700

大物実業家ヴェンネルストレムに関する記事が裁判になり名誉毀損で有罪となった「ミレニアム」発行責任者のミカエル。失意のミカエルの周辺を大企業ヴァンゲルグループの前会長ヘンリックは調査員を雇って調べさせる。担当したリスベットの報告から、ヘンリックは兄の孫娘ハリエット失踪事件の調査をミカエルに依頼する。事件を解決すれば共通の敵であるヴェンネルストレムを今度こそ葬り去れる情報を渡すという条件付きで。ミレニアムから離れることを考えていたミカエルはこの依頼を受け入れる。

世界で800万部売れたとか、出版を待たずに著者が亡くなったとか大きな話題だし、好きな書評家さんが絶賛しているので興味が湧かないわけがない。
それに久々のスウェーデン小説だし(読んだなあ、マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーのマルティン・ベック)。
しかし、上巻はいささか戸惑う。
リスベットの優秀さ、ミカエルが調べ始めたハリエット事件の表情などは見えるのだがどうも乗れない。
下巻になって、二人が顔を突き合わせてからは転がるように進んでいくので一気だったが。
各章タイトルの裏にスウェーデンでの虐げられた女性の立場が書かれているが、ミカエルが探し出してしまった事件の本質もそういうことだった。犯人が精神を病んでいるのだが、女性の扱われ方が無関係とはいえないかも。普通の女性でもひどいめにあっても口をつぐむ、さらに立場の弱い、身寄りのない人を選ぶ、人の心とはいえない。
この真相に直面したリスベットとミカエルの感情が違う。
警察に通報し、全てを知らせるべきというミカエル。しかしリスベットは「警察とは関わりたくない」。
ここらへんにリスベットのタトゥーの意味や、社会不適合者とされていることが隠されているのかもしれない。
最初から三部作と聞いているので(本当はもっと続くはずだったようだが)、リスベットのこれからがとても気になる人なのだが…。
ハリエットの失踪は「え?」だし、失踪事件解決後の新情報でヴェンネストレムと対決があるのかと思いきや、逃げちゃったうえにあんなだし。これならヴェンネストレム部分は私にはいらなかったなあ。
リスベットに多くの謎があるようなのでシリーズ続きは彼女の生い立ちや、ミカエルと出会ったことで無意識に心の通い合いを求め、それに気付いて困惑する彼女、はたまたそんな彼女を見てミカエルはどうなるのか?、そういった感じで読みたいな、と。

余談
ただ単にスウェーデンつながりというだけですが。
先日WOWOWで、ヘニング・マンケルの刑事ヴァランダーのドラマを三本見た(イギリス製作)。
「目くらましの道」を非常に体調の悪い時に読んだせいか「自分には合わない」と思っていたが、視聴後「原作を読み直したい」と変わった。一作目から読まなかったというのも原因だったかも。
「合わない」と思ったわりには「ミレニアム」より好みだったな、と今なら思えるし。
8月3、4、5日と再放送があるので見られる環境の方にはおすすめ。
そしてミステリチャンネルでは8月14日から本家スウェーデン製作の「刑事クルト・ヴァランダー」の放送開始。予告見た限りではとても期待しているのですがどうでしょう?
検死審問ふたたび (創元推理文庫)
「検死審問ふたたび (創元推理文庫)」
 [文庫]
 著者:パーシヴァル ワイルド
 出版:東京創元社
 発売日:2009-03-20
 by ええもん屋.com

リー・スローカム検死官が今回担当するのはトーントンに越してきて間もない作家アラステア・ティンズリーの焼死事件。願いがかなって陪審長となったイングリスは並々ならぬ気合いで審問会に望むのでした。

たいへん面白かったリー・スローカム閣下を検死官とする「検死審問」の続編。
娘のフィリスを速記者に、証言録の枚数+日当のお手当て金額を計算しながらの進行と思わせて事件はきっちりとした眼で観察しているスローカムのお手並みは相変わらず見事。
事件に関係あるのかないのかわからない方向に白熱する証言もやっぱり楽しい。
前作をふまえて「この中にキーポイントがあるのだな」というワクワク感をプラスできてなおさら楽しかった。
陪審長となったイングリスが審問記録に注釈を加えているのもいい。
注釈ってわかりにくいことの解説なのに、イングリスのはまるで「つっこみ」。
私がつっこみ好きだからこれはまたたまらない(笑)。
数々の証言から事件に重要なことを見極めたスローカムが下す裁定は「日当しか考えないとぼけた検視官が見落としました」を装って落ち着くところに落ち着かせる。
罪を憎んで人を憎まず、といったところでしょうか。
キングの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「キングの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫)」
 [文庫]
 著者:ジョン ハート
 出版:早川書房
 発売日:2006-12
 価格:¥ 987
 by ええもん屋.com

1年半前に失踪した父の遺体が見つかったとの報告を受けた息子ワーク。何の連絡もない1年半と横暴だった父の性格からその死に悲しみを覚えることはなかったが犯人の心当たりに動揺する。それは父と不仲だった妹ジーン。「妹は精神的に不安定、刑務所に送ることなんてできない」とワークは行動を起こす。しかし警察は不審な動き+莫大な遺産の相続人であることからワークを犯人と目し追い詰めていく。

「川は静かに流れ」に読み応えを感じたジョン・ハートのデビュー作。
崩壊した家族、だからこそ妹を守りたい想い、どん底に突き落とされたかに見えても待っていてくれた再生の灯り、とこちらも読み応えあり。
いきなり死体で登場する父親エズラのヒドイ人ぶりと主人公ワークの後悔しっぱなしの部分に多少閉口するものの、全てはラストに待っている灯りのためと思える。
でもですねえ、ワークの思い込みはどうだろう?
妹が犯人かも、の根拠って仲が悪いからでしょ?
ワークは弁護士なのにもう少し外堀から考えるということはしなかったのかね、警察には「他の線を考えろ」って言うくせに。
仲の悪さの根深さを知っているからともいえるのでしょうけども。
それに、奥さんのことホントに見てない、読んでるこっちは何となく想像ついたぞ(笑)。悪人だったけど奥さんには同情もするなあ。
つまり、妹の見立てどおり、ワークは弁護士に向いていないということが語られていたのかもしれない。

そして気になるのは「川は静かに流れ」と読む順番を違えていたら自分はどんな感想持っただろう、ということ。共通点多いですから。
崩壊した家庭、殺人のヌレギヌ、過去の女性、心の支えとなる隣人…とね。
何よりも最大の共通点は主人公の思い込みの強さ。
聞いたり、調べたりの結果でなく、思い込みで突っ走る姿が重なる。
妹が精神的に不安定だから肝心なことを訊ねられなかったというのもあるかもしれないが、そのわりには妹の同居人の過去と事件への関わりを示唆する件はまさに突っ走り型。
今後も著者は崩壊からの再生を書き続けるのかもしれない。
でも今度はもう少し思い込みすぎない主人公を読んでみたい気もする。
最低の人間だけど父、というワークの気持ちは身に沁みたなあ…(笑)。
川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)」
 [文庫]
 著者:ジョン・ハート
 出版:早川書房
 発売日:2009-02-06
 価格:¥ 1,029
 by ええもん屋.com

殺人の濡れ衣を着せられ逮捕、裁判で無罪となったにもかかわらず、家族とも縁を切らざるをえず、故郷を追われたアダム・チェイス。
5年後、アダムに故郷の友人ダニーが助けを求める電話をかけてくる。
断ったものの、3週間後にアダムは吸い寄せられるように戻っていく。
そして彼を待ち構えていたかのように事件が起きる。

こう書くと安っぽいミステリに聞こえるが、ミステリであることよりも心の再生小説の色が強い。
無実となったのに、5年も経っているのに、住民のアダムを見る目は「殺人者」。
そして新たに起きた事件にも彼の関与を真っ先に疑う何も変わらない町。
真相にたどり着くまで二転三転…町とチェイス家の澱みの部分を次々と見せられる。
まやかしの道を見せられているというよりも、再生に向かうためには必要な筋道だったという気がしてならない。
全てを踏んでいかないとラストの余韻をもたせるアダムにはなりえないなあと感じるから。
アダムもお父さんも、変に物分りがよいということがなく、同じだけ振り回されもがいている姿に体温を感じる。
求めたのは断罪ではない、大切なものなのだ、たとえそれがひび割れでも。

今ミステリチャンネルで視聴中のフランスドラマ「アヴィニヨン伝説」では振り回される人たちを「気がコロコロ変わりすぎ」と笑ったが、この本を読むと益々「アヴィニヨン~」の人たちは気分にムラがありすぎに思える。最終回で何かしらの答えがあるかもしれない、とわずかばかり期待(少しウソ)。

最近、話題の本を読んでも入り込めないことが続いて自分が読書に根気がなくなってきたのかなあ?と不安感が漂っていたが、単に合わなかっただけのよう。これは満足でありました。
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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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