バーニーズ・マウンテン・ドッグのマージ。11歳。
悪性組織球症という病気に冒され、永遠の眠りにつくまでの日々が綴られた本。
「読まない」と決めていた。
元々、闘病記やペットを亡くした本は読まない。
哀しく、寂しくなることがわかっているから。
馳さんが彼女を飼い始めた頃を知っている。
あのマージでしょ、書評の連載なのに必ず触れられていたマージでしょ。
だったら余計、泣いてしまう自分が想像できる。
でも読んじゃったよ。だっていつの間にか家に本があるんだもの!
余命を告げられた後、少しでも快適に過ごせるよう
かつて楽しそうにしていた軽井沢に一夏移り住んでしまう。
でも病気は止まってくれない。
どこまでも献身的。だって大切な家族だもの。
住まいまで替えることはできないが、出来る限りのことはしてあげたいとは思うもの。
大切に大切にされてマージは幸せだっただろう。
病気は苦しいけれど、きっと幸せだった。
あとがきにもあるけれど、犬に人間と同じ寿命を期待するのは無理。
そんなのわかっている。一生が短い分、飼うことを選んだ自分の責任を考えてしまう。
「一緒にいられて幸せだったか?」この言葉に集約されていると感じる。
馳さんがペットロスに陥らなかったのは、もう一頭のワルテルの力が大きいんだろうな。
哀しいけれど、ワルテルはお腹もすくし、散歩もしたい。
自分を頼りにしてくれる子がここにもいる、そんな気持ちの勝利だろうな。
こんなこと考えちゃうから読みたくないんだよな…(笑)
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景気が後押しした1980年代のちょっとどうかしていたと思われる時代。
クリスマスやバレンタインデーが定着しだしたのもこの頃らしい。
あまり関係なく過ごしてきたので意識したこともないが。
若者文化の変動を、世の中がいつの間にかそうなっていた、それがいつからなのか検証してくれる。
「若者」に商品価値を見出し、取り囲ってしまった大人の時代といえるのかも。
だいたいその頃の若者なので、ふんふんと頷いて読める。
しかし。
単位が今は「来る」ものだというのには驚く。
私の頃は確実に「取る」ものだった。
それとも早稲田だけで他の大学では今も「取る」ものでいいのだろうか。
何だか不思議な感じ。
「取る」だとがっついてて下品だとか、ニュアンスにも世代の差を感じ、少し寂しくなったりして。
「現地へ行ってオリンピック観戦記を書く」と決めると直木賞が獲れるのか?と思いたくなった。
東野さんは授賞式のパーティーから帰宅し、1時間後にはトリノへ向けて出発。
アテネオリンピックへ行った奥田英朗さんにいたっては日程の関係で授賞式欠席という(笑)
前から決まっていないとこうはならないわけで。
こんなことしか残らないほど、観戦記…?なわけですよ。
冬季スポーツに思い入れが強いのはわかるけれど、なんだかなあ。
東野さんのエッセイは面白いし、以前カーリングで大怪我したことがあるので期待してたんだけどなあ(どういう期待だ?)
どっちかというとトリノ編がおまけで、その前の冬季スポーツの紹介がメインにきたほうがより面白かったかも。
夢吉の存在も中途半端かな?
病院が舞台。
卒中で倒れた入院患者、コイツが悪いヤツ。DV旦那なわけですよ。
気に入らないと奥さんを怒鳴りつけ、殴る蹴るの横暴極まりない男。
幸い(なんだかどうだか)後遺症も軽く、いつ退院してもいいのに「高い金を払ってやっているのに(特別室利用)」と退院の素振りを見せない。
こいつ、奥さんに対してだけでなく他の入院患者に対しても暴言を浴びせる。
「あんたは良くならない」とリハビリの気を削ぐようなことを平気で言う。
当然みんなの嫌われ者。
向かいの病室には同じように卒中で倒れ、こちらは半身に後遺症がみられる。
対象的に医師にも看護師にも、身内の奥さんに対しても「ありがとう」の言葉を忘れない優等生患者。
でも、後遺症の残る自分を役立たずと決め、自殺願望を看護師に語る。
仕事柄薬品に詳しく、仕事先から自殺用の毒物を持ち出している、それを飲んで死ぬ、と看護師に言うが毒を取り上げられ、改心したかに見えた。
ある日、病院から毒物盗難事件が発生。それが解決しないうちに横暴患者が盗まれたものと同じ毒で死亡する。
こういった本だから誰かが殺されるだろうことは想像つく。
なので殺されるならコイツであって欲しいヤツが殺されるのでスッキリするが、ということは絶対このままではすまないのだな、と新たな展開が想像される。
その新たな展開がお見事。
ああ、そうか、と気をつけて読んでいればうかがえるかも。
あの横暴男が酷すぎるので気を取られてました。
DV被害者の複雑な心理も伝わってくる。
DVって目に見えることだけじゃないからね。狡猾なヤツもいるからね。
質が悪いったらありゃしない。
以下ネタバレですが。
看護師に自殺をほのめかし、偽薬を手渡した優等生患者、あれで自分に注意を向けさせて影で舌を出していたのかと思うと、心底気持ち悪い。
横暴DV旦那の方がわかりやすい分、罪が少ないかもしれない。
いや、奥さん殴っちゃいけないんだけどね。
でも周りには知られないように、注意を払いながらの優等生患者は許しがたい。
奥さんや子供達の表情がサインだけれどそこまで突っ込めないでしょ。
仕返しが恐いし、経済的に自立できないし、何より周りにこの事実を知られたくない必死さもあるんだろうな。
毒ってのはこの男のことだな。
自宅の火事に飛び込んでいった親友正哉の死を目の当たりにした音村夏貴、14歳。
哀しみにくれる中、形見の携帯電話から正哉の声が聞こえてくる。
「あの火事はおかしい」
正哉の声と共に夏貴は火事の真相を探り出す…
死んだ友達が形を変えて主人公と行動を共にするという設定は「向日葵の咲かない夏」と似ている。
こちらの方が先だし、暗い事件を追っているにも関わらず、少年の清々しさに満ちている。
火事の真相を探るのが一番のテーマ。
そうすると夏貴の通う病院で行われている行過ぎた不妊治療にたどり着くわけで。
そのまわりに母子家庭の生活、過呼吸発作に悩まされる夏貴、突然現われた母親の婚約者といったことが織り込まれる。
たくさん詰め込まれているようだけれど、この行過ぎた不妊治療と全て関わってくるわけなので、そう詰め込み感はない。
後半母親の婚約者の頼もしさに引っぱられるが、携帯電話に現われる正哉との二人三脚捜査をもっと楽しみたかったかな。