忍者ブログ
本の感想
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

やみくも―翻訳家、穴に落ちる
鴻巣 友季子
筑摩書房
売り上げランキング: 182358

「孕むことば」よりも前に出されたエッセイ。
「孕む~」は言葉というテーマが底に流れている感じがしたけれど、こちらのほうが普通にエッセイ。
お上品で隙のない方といった印象のあちらよりもこちらのほうが私にはとっつきやすくて好きだ。
別にこちらがお下品で隙だらけというわけではないが。
   なにかやりだすとすぐ、横道へ横道へとそれていってしまう
   本や映画などでは、本筋と関係ない些事・細部に目がいく
   仕事の成果に直接影響がないことに限って力が入る、凝りまくる
   道ばたの穴が妙に気になる
そんなあなたはやみくも体質の恐れありと帯に書かれているらしい(図書館本は帯取られちゃうのでAmazonで見た)。
道端の穴はそう気にならないけど、他は十分あてはまる。
ああ、私もそうなのか…。
でも否定的な気分にはならないな。
これがやみくも体質の方のエッセイだとしたら楽しいことしか伝わってこないので、そういう体質は得だなあと思える。
さげさかのりこさんの挿画も味わい深くてステキだ。
何でもない町の風景はもちろんだが私が食いついたのは主役とも言える黒犬。
気持ちに誘われるままに町を行き来していて、興味津々の様子がこの本にぴったり。
穴をのぞいたり、走ってみたり、自転車の人を見上げたり、いつもしっぽが振れているようにみえるから不思議。
犬好きのせいですか(笑)。
PR
孕むことば
孕むことば
posted with amazlet at 08.08.20
鴻巣 友季子
マガジンハウス
売り上げランキング: 20831

翻訳家として名前は存じ上げてましたが、これより前にエッセイも出されていたのですね。
これは大きな仕事を依頼され子どもを持つことを諦める覚悟で臨んだところ、 あれよあれよと結婚・出産を迎えてしまった鴻巣さんの子育て&翻訳家ならではと思わせる言葉のエッセイ。
子どもも言葉も大切に大切にしているのが伝わってきて人としてのあり方を教わったような気がします。
当たり前といわれればそれまでですけども。
下関係の話をここまで上品に書けるのか、と感動もしました(笑)。
子育てエッセイというのは子ども自慢でしかないようで敬遠しているのですが(自分に経験がないからか?)、伝わってくることが深くて優しくて、ふだんガッハッハなエッセイを好む私にも満足でした。
お子様の日々広がっていく言葉の世界も楽しいですが、ご主人の「(翻訳と)先に結婚しちゃってたんだから」という言葉もその世界を一緒に培っているのだなと感じられます。
モザイク事件帳 (創元クライム・クラブ)
東京創元社
小林 泰三(著)
発売日:2008-02
おすすめ度:5.0

表紙見返しに「精緻な論理が、そこはかとない黒い笑いを構築する待望のミステリ連作集」とある。
それぞれの短編のテーマが犯人当てだったり、安楽椅子探偵モノだったり、バカミスだったりする。
後半にいくほど黒い笑いが濃く感じられたのは私だけだろうか。
あと混乱度合いも高くなるような。
お気に入りは安楽椅子探偵モノの「自らの伝言」と日常の謎をテーマにした「路上に放置されたパン屑の研究」。
「自らの伝言」は感じの悪いコンビニ店員が感じのいいコンビニ店員とその友人の話から事件を推理するというもの。
「路上に~」は記憶障害の探偵のところに趣味が探偵のような男がいつも同じ謎を持ち込んでくるという(笑)。大好きですけどね。
小林さんのものは最近はほとんど読んでなかったけれど、この本に探偵役として登場している人は以前の作品にも登場しているようなので背景を知るにはそっちも読んだ方がよさそうだ。
アジワン―ゆるりアジアで犬に会う
片野 ゆか
ジュリアン
売り上げランキング: 490428

最近ケーブルテレビをアナログからデジタルに変更したので本を読む時間が減ってます。
だってデジタルって映像がキレイすぎて目の奥に堪えるのです。
なら見なければいいと思われるでしょうが、デジタルにしたのは見たい放送局がデジタルでなら見られるようになったからなのです。
私が海外ドラマ好きであることを忘れてもらっては困ります。
なので「録画してワンクッションおく」という対応策をとってます。何か間違ってるのは承知してます。
で、そんなこんなで小説本は途中で止まっているものが何冊か…。
途中で止めると止め癖がつくので何でもいいから最後までたどり着こう!ということでフォトエッセイのこの本を選択。

著者片野さんのブログのワンコーナー(あ、シャレになってる)が本になったらしい。
犬の写真集は大好き(コレとかコレ)。街中に普通にいる犬たちを写したものが表情あるから特に好き。
タイトルの「アジワン」とは
アジア地域で暮らす、犬たちのこと。リードをつけず、自由に道端を歩き回り、好きなところで昼寝を楽しんでいる。しかし、その多くは野犬ではない。地元の人々とともに暮らし、愛情をそそがれ、ときには役に立ったりもする。犬たちの様子から、そこで生活する人々のことが少しだけ見えてくる。(こともある)

…耳柴?(笑)
どの犬もnyattoさんのブログでかわいらしさをふりまいている耳柴と同じ表情ですよ。リラックスしまくりですよ。
日本ではリードなしなんて考えられないけれど、アジワンたちは「リードって何?」と言ってます。
存在を知らないからあんなに穏やかなのだな、日本の犬たちは存在を知ってるからある時とない時で態度が変わるのだなと自分の中で結論付けてみました。

犬の匂いマニアとしてはどの写真も見ているとヨダレが出て困ります。
そんな中で感動したのはホンモノの負け犬の遠吠えだ!
表紙の写真がその張本犬らしい。カッコ悪くて愛らしい、写真から空威張り声が聞こえてきそう(笑)。
隠蔽捜査 (新潮文庫 こ 42-3)
今野 敏
新潮社
売り上げランキング: 8915

竜崎は東大卒の警察官僚。いつも原理原則に則ったもの言いで「変人」の異名を持つ。そんな竜崎の目の前に過去の犯罪者への連続「私刑」事件が発生する。それが現職警官の不祥事事件とわかった時、組織は隠蔽の道を選ぼうとしていた。自身の息子の不祥事と重ね合わせた竜崎の選択は…?

確かに組織の中にいたら変わり者だけれど、自分たちは生活の保障を得たも同然、それならいつ何時でもピンチには全力でという国家公務員としての覚悟は素晴らしい。
頭ではわかっていてもなかなかできることではない。
それを本当に負担にも感じずにやってみせるのが竜崎という男。
なにせ、今の世の中の公務員の国民の上への胡坐のかき具合といったら呆れるばかりなので「竜崎を見習えよ」と言いたくなる。
しかし、話のスタートの東大以外は大学でない、息子は東大にいかせたいが姉はどこでもいい、妻は家庭を守るもの、といった堅物の見本のような登場には嫌悪を感じたのも事実。
鼻つまみものが主役なんて困ったなあと思うのも束の間、その裏表のなさがだんだん魅力に思えてくる。
彼を慕う部下がいるのも、伊丹が彼に憧れていたのも頷ける気がする。
最後には家庭人としての喜びも知らず知らずのうちに得られたようだし、正義を信じるものの強さに安堵。
続編、竜崎にどんな変化があるのか、あるいはないのか、とても楽しみ。
前のページ HOME 次のページ
photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
忍者ブログ [PR]
更新中
RSS表示パーツ
ブログ内検索
読書メーター
カクテキさんの読書メーター
アクセス解析