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本の感想
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安楽椅子探偵アーチー (創元クライム・クラブ)
松尾 由美
東京創元社
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誕生日プレゼントのゲーム機を買うために2万8千円を握り締めディスカウントショップへ向かう小学5年の及川衛。
しかし、途中の骨董屋で見かけたアンティークの椅子から聞こえたため息が気になってゲーム機はやめてこの椅子を買うことに。
透明人間付きで椅子を買ったと思う衛だったが、実はこの椅子自体が喋るのだった。
こうして衛と椅子のアーチーの奇妙な関係が誕生。

安楽椅子探偵モノを読みたいと思って探していたら、そのものズバリのタイトルを見つけたのでチャレンジ。
そうとは知らずに読み進めたら、安楽椅子探偵は本当に椅子だった。
ただ意識があって喋るだけでなく、衛が首を傾げる出来事を磨きぬかれた洞察力で解決に導く。
アーチーの手となり足となり情報を披露する衛とミステリ好き同級生野山さんとのやりとりが可愛らしくって。
そんなよき友アーチーも自分の素性に関して気掛かりなことがあり、いつか衛に2番目のご主人様を見つけてもらいたいと思っている。
さて、衛はアーチーの力になることができるのかな?と、どの話もそういう優しい気持ちで楽しめる。
このシリーズが他にも出ているようなので読んでみようかな。
そう言って放ったらかしのシリーズもあるけどさ(笑)。

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押入れのちよ
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荻原 浩
新潮社
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「噂」を読んでちょっと気になる荻原さんの9編からなる短編集。
長編のじわじわと盛り上がってクライマックスへ向かうのもよかったが、瞬発力の短編も面白かった。
普通にホラーなものから読後にしんみりと優しい気持ちにしてくれるのにホラーテイスト、さらにはブラックコメディ、と多彩。
タイトルになっている「押入れのちよ」は優しい気持ちになれる。
見栄坊だった主人公が、格安の部屋に住む「ちよ」と出会ったことで自分を取り戻すお話。
人相判断のできるちよを就職先に使おうと試すが、ちよの悲しい生い立ちを聞いてからはちよのために!となる。
いい出会いだな~とこっちも喜べる。
どの話も好きだが昔読んだ「殺意の団欒」が凝縮されたような「殺意のレシピ」がお気に入りかな。
不仲の夫婦がお互いに「今日こそは!」と決戦の日を迎える。
その日のために年単位で計画している執念は見上げたもの。
打ち合わせもしないのに同じ日を選ぶなんて、やり直してみてもいいんじゃないかな?(笑)

まだ2冊しか読んでいないがスルーしていたのが後悔されるくらい、好みの作風の方であります。

殺意の団欒
文藝春秋
北村 太郎(著)ジェームズ・アンダースン(翻訳)James Anderson(著)
発売日:1989-06
おすすめ度:4.0

東京カオス
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アンヌ・ランバック
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警視庁との交換研修生として東京にやってきたワシントン市警の郷順子。彼女が日本に到着するのを待っていたかのように事件が発生する。被害者の所属していた宗教団体の仕業なのか、テロ組織なのか、焦点が絞れないでいるところに第2、第3と事件が起きる。被害者の関係性はないように思えるが犯人の目的は何なのか…?

外国人作家(フランス)が日本を舞台にして書いたということで私の野次馬根性を止められませんでした(笑)。
「HEROES」に登場するようなびっくり日本を期待したが、そういった意味では肩透かし(笑)。
無闇に外国人の考えそうな日本らしいものを羅列するわけでもなく、今の東京を描いているのであまり不自然な感じは受けないかな。
少しだけ出てきた地方がたまたま私の知っている近辺なのでそこには多少の違和感あり。
成田在住の警察官が富津警察に勤務するのかなあ、とか。遠距離通勤だと思えばいいのか。
翻訳小説を読んでいると、「スーパーで買い物」じゃなくて「ウォルマートで買い物」等固有名詞がよく出てくる。これもそう。
日本を舞台にしているのにそんな書かれ方がちょっと新鮮だったかも。
劇場じゃなくてシアターコクーンとかね。

肝心のストーリーは、犯人の意図が全くわからず。
犯人の父親が731部隊だったこと、それが犯行にどう影響を与えたのかもいまひとつ…。
それがないとただ日本批判で靖国神社と同じような意味で731部隊のことを書いただけに思える。
何故レズビアンをターゲットにしたのかその告白くらい欲しかった。
舞台に設定しただけでなく、オウム真理教を思わせる宗教団体や阪神淡路大震災等、日本の出来事もかなりリサーチしてあるなと好感は持てただけに残念。
阪神大震災で家族を失った高校教師が「生徒と共に学校にいて助かった」とあるが発生は午前6時前だったのでこれもちょっと残念。
あとは…警部が多すぎ。しかもみんな現場に出てる(笑)。
続編として順子を主人公に「Tokyo Atomic」、「Tokyo Mirage」があるようだが…、どうかな?(笑)
少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)
桜庭 一樹
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中学2年生の大西葵の家庭は複雑。母は市場でパート、義父は漁師だったが怪我をしてからは飲んだくれて暴れるだけ。その反動で学校ではおちゃらけてみんなの注目を集める存在。楽しい学校も夏休みを迎えてしまった。その夏、葵のそばにいたのは不思議な魅力をまとった図書委員宮乃下静香だけだった。

「少女七竈~」で気になったので過去作品を。
タイトルから女には向かない職業 (ハヤカワ・ミステリ文庫)を連想するから、コーデリアみたいに葵が成長していく話なのかなと思ったら大間違い。成長したといえばそうなのだろうけれどポイントはもっと別のところ。
書き出しで葵は人を二人殺したことを告白する。人を殺してしまったことで自分が死にそうなくらい怯えている。人殺しは少女には向かない、そういうお話。
書き出しを見ると静香が葵をそそのかしたかのようだが、二人がたまたま呼び合ってしまった結果としての人殺し。お互いに不安定な家庭でより所が欲しい境遇。それなのに誰も自分たちをそう見てはくれない。楽しい夏を過ごした果てに人の死に出会ってしまい、また仲良くするには人の死が必要と考えてしまう静香とそれに怯える葵が対照的。
誰かが手を差し伸べていたならありえなかった。実際、心に触れようと歩み寄ってくれたおじさん警察官には告白できたんだもの。
苦言を呈す箇所は、土産物屋でそんな危険なものを中学生に売ったということかな(笑)。
募集広告に応募して別人になる訓練、演じる性格づけ、遺言を書き換えさせることが目的等静香の嘘の告白は「わらの女」だな~と思っていたらその通り、静香のリュックの中のテキストでした。
サクリファイス
サクリファイス
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近藤 史恵
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高校時代陸上中距離で活躍した白石誓は大学から自転車ロードレースの世界へ入る。プロチームの有望若手として国内最大レース、ツール・ド・ジャポンのメンバーに選ばれる。与えられた役割-エース石尾のアシスト-をこなしていくがそこに石尾の悪い噂を吹き込まれ誓は戸惑いを隠せない。

自転車ロードレースという私の知らないスポーツの話なので敬遠していたが、評判がよいようなので読んでみた。
これは個のスポーツではなくチームなくしては成立しないものなのですね。日本人向きのような気がするけど、どうしてマイナーなのかな。見るには地味ってことなのか。
すべてはチームのためとの想いが自分の我としか受け止められなかった石尾は哀しい。確かにチームを想えばこその行動もかなり行き過ぎてるけどね。自分はたまたまエースポジション、支えていてくれるのはチームの人たち、。感謝だけでなくチームメートそれぞれのことまでをも心に刻んでいた石尾の行動は二つの事故以外では尊敬に値すると思う。でも事故後も変わらないとか、マシンのような恐さも感じる。
対して事故で石尾に選手生命を奪われた袴田は自分の過ちを認めても(認めているのかは疑問)なお上回る石尾への憎しみが強烈。それでもチームのために徹した石尾に袴田は何を感じただろう。
石尾の真意を知ることで自分が欲していた場所を見つけられた誓の成長物語。気に入らないのは香乃かな。レース前に自分でも噛み砕けてない僻みのような噂を当人に話すし、一番知りたい事故のことにしても話すタイミングってものがあるでしょ。誓の重要なポイントにいつもいるけれど、心惹かれるが必要ないと確認させるためかのようだった。
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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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