恋愛変格ミステリだそうです。
マリオネット症候群
御子柴里美(高校1年生)はある日身体をのっとられてしまった。
意識はあって物も見えるのに、身体を動かしたり喋ったりしているのはどうやら別の人。
これが噂に聞いた母方の家系に伝わる体質だという(笑)。
憑依されるのは自分が殺した人だというから始末が悪い。
故意か偶然かに関わらず、殺してしまった人の意識が自分の身体の中に入ってくるらしい。
念のために言えば、里美はそそっかしかったから。
自分のそそっかしさから憧れの森川先輩が死んでしまったなんて知ったら立ち直れないと思うが、そこは悲しむ余裕なんてないほど特異な状況に陥り森川先輩と一緒♪とちょっと嬉しそうだったりする。
終盤、里美のさらなる秘密が明らかになったり、あの人があの人の命を奪うとこうなって…と少し混乱しそうになるが落ち着いて読めば大丈夫(笑)。
クラリネット症候群
養父関さんのクラリネットを黙って持ち出した天罰か、いじめっ子にクラリネットを壊された直後から「ドレミファソラシ」の音が聞こえなくなってしまった犬育翔太(高校1年生)。
関さんに謝りたいのに何やら事件に巻き込まれたようで不在。
その事件がクラリネットに関わっているらしく…。こちらは暗号モノ。
翔太は「ドレミファソラシ」の音が聞こえないため、翔太に聞こえる言葉は全てその音が消されて書かれているので読みにくいことこのうえない(笑)。
しかし暗号文を読み解くような楽しさが!
「イニシエーション・ラブ」の後ではどんな仕掛けもかなわないかもしれないが、2話とも特異な枠の中で破綻のない展開が楽しいです(たぶん)。
両方とも切羽詰っているはずなのにさほど感じられない緊張感、それどころかそこに馴染んでいく対処能力の高さに感動する(笑)。さすが、高校生!なのか?
「クラリネット~」の暗号は音符、点訳と二重変換と凝ってますが、著者は暗号好きなのかしら?(「林真紅郎と五つの謎」)
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読む前のネタバレは避けようとしていてもこの本に流れるテーマは目や耳に入ってきていた。
そのことを明らかにしてもなお読ませる何かがあるのだと前向きに考えて読んでみた。
が、私にはダメだ。
今から徐々に過去に返りながら状況が見えてくるのはとても興味をひかれたけれどダメだ。
近親相姦に嫌悪感があるのももちろんだけれど花と淳悟がわからない。
いつかもわからない娘の帰りを寒空の下で待つとかその理由が浮かんでくるところなどは好きだが。
良いも悪いもない、どうしてなのさ!というのが正直な感想。
家族を失った花を引き取ろうとする淳悟を心配する大塩のおじさんが「君は欠損家庭だから」と本人に向かっていうのがとても引っ掛かった。
このじいさん、何てデリカシーのないことを言うんだ?と。
しかし読後にはそれが正しかったように思えてしまった。
もちろん実際の世の中ではそんなことないというのはわかってます。
淳悟に限っては大塩さんの見立ては間違ってなかったのかなと感じたということです。
そう感じてしまったのは奥尻から花を連れ帰る淳悟が二人が親戚であることを話す場面で、自分は花が産まれる前奥尻に預けられていたがそれっきり、俺も、あきちゃったしというところ。
あきちゃったし、この言葉に拒否反応。
何にあきたのか、奥尻?竹田の家?花のお母さん?そう思うともう…。
父親を亡くし、存在としての母親も亡くしたこと、大塩のおじさんが本当に手を差し伸べなければならなかったのはその時の淳悟だったのだな、そう気付いたからこその後悔が事件を生んだように思う。
本を読み終えると登場人物の今後や以前を想像するのが好きだったりするのだが、これはできない。
花が淳悟を捜すのか捜さないのかなんてどうでもいい。あれ?ちょっと想像してるじゃないの(笑)。
共感できるかどうかだけを追い求めて本を読んでいるわけではないのに。
もしかしてこの本の本当に評価すべきところを見逃しちゃったのかなあというくらい世間様の評判とはかけ離れていると感じたのでした。
桜庭さんの他の本は結構好きなのになあ。
右ページがいしいひさいちさんのマンガ、左ページがいしいさんのマンガでおなじみの登場人物、文壇長老広岡達三、推理作家タブチコースケ、新進作家藤原ひとみによる書評という構成がメインの本ガイドブック。
いくつか広岡先生のお手伝いさんも登場してます。
左ページはふつうに本の感想だが、右ページは本の内容とは必ずしも合致していない。
そこからのインスピレーションで描かれている。そして時に難解(ウソ)。
いつだったか、教えて!gooで「今朝の、ののちゃんの意味がわかりません」という質問があって驚いたが、その片鱗が垣間見えるとでもいうのだろうか。
新進作家の藤原ひとみはその「ののちゃん」でののちゃんの担任の先生。
彼女が先生を辞めて作家になったという「女(わたし)には向かない職業」という本もあったな。
取り上げられている本はふつうに小説、ミステリ、ノンフィクション、となんでも読みたい派向き。
そしてこの本は2001年に出たもので、親本はもっと前なので時代を感じずにはいられない話題も当然ある。
その最たるものが島田荘司「三浦和義事件」。
この本は読んでいないが三浦擁護の立場であるとは聞いたことがある。
有罪?冤罪?といっているうちに無罪判決、著者が三浦有罪までひっくりかえしてしまうとは…というようなことで締められている。
島田荘司さんもいしいひさいちさんも2008年になってこれに続きがあるとは思わなかっただろうな。
最後に雑誌編集部の内幕マンガとして新人編集員しおりちゃんの活躍する「しおりの編集日記」もありますが、このしおりちゃん、宮○みゆきさんですよね(笑)。
大学時代の友人の葬儀で顔をあわせることになった四十代半ばの4人。5人は共に生活した仲の良い友人であったが卒業後一同に集まるのは久しぶりのこと。友を見送りそれぞれの生活に戻りかけたところで淳平が「この車で一人で帰って、自殺する」と言い出す。さらに「自殺の理由を思い出したらやめる、理由は共に暮らしたあの頃にある」と言う。思い止まらせるために仲間はそれぞれ帰りの予定を変更し、あの4年間を想いながらのロングドライブが始まる。
楽しかった、幸せだったあの頃を時間に縛られずに思い巡らす。
もう一緒には歩めない友を弔う、その最高の方法を淳平は思いついたわけだ。
もちろんきれいなことばかりではなく忘れてしまいたい苦いことも思い出されるがそれも含めてのあの頃。
共に泣いて笑って怒って過ごした日々を素直に宝だといえることを羨ましく思う。
最高の弔いをして家庭のある二人が帰った後の本当の告白。
「慎吾とはたびたび会っていた」の意味する切なさが肝。
でも、一点だけは理解できない。そう、復讐のこと。
「それでいいのか?」と止める人がどうしていなかったのか疑問。
自分だったらそんな経験した後は数人ずつでも再会するのは勘弁して欲しい。
だって、新聞をチェックするくらいに悪いことである意識はあるんでしょ?
「HEART BLUE」でもそうだったけれど小路さんは登場人物にどうしてこんなことさせるのかな。
集団心理の恐ろしさがまとわりついて困る。
「HEART BLUE」の感想で否定的なこと言っていたくせにまた手に取るほど読みたい、読ませる、なのに。
5人と一緒の茜は見えるけれど、問題の部分となるとちょっとちぐはぐな気がしないでもないし。
これも合わせていつか私にもわかる日がくるのだろうか。
タイトルの単語、morningだとばかり思っていたらmourningでした。
答えを見つけた朝と友の喪と、二重の意味をもつタイトルだったのですね。
世代的には自分より上だが、学生時代に憧れていた講師の世代と丸かぶりでミュージシャンや曲名に切ない気持ちを穿り返された。
憧れの人の趣味って追いかけたくなるでしょ(笑)。
そういった意味では私にも青春振り返り小説でありました。
11月9日追記
TBさせていただきました。
こんな夜だから本を読もう(shiba_motoさん)
クリスマス間近の町から二人の少女が姿を消す。家出?誘拐?事件に関わることになった警察官ルージュ・ケンダルは15年前に双子の妹が誘拐され殺されたことを思い出さずにはいられない。そこへ顔にひどい傷を負った女性が「あなたを知っている」とルージュの前に現れるがルージュの記憶にはない。この女性とルージュの過去、今回の誘拐事件との関連は?
ストーリーは捻くれた本読みには想像つく。
15年前の事件は冤罪だな、おそらく町の人が関わってるなとか、ルージュに近づいた謎の女性アリのことも。
しかしこれは話が見えていたとしてもその書かれ方に心奪われずにはいられない。
話が一段落したと思わせた後に控えていることが影響しているだろう。
監禁された少女たちの勇ましさが読みどころの一つなのだが、それがこんなことだったなんて。
事実を突きつけられても少女二人がいたことは動かしようがないくらいしみこんでしまっているもの。
読後、ああこれが、あああれもと次々に頭に浮かび、今度はルージュ、神父、アリたちの心に想いが広がり終わりが見つからない。
そんな何かを刻まれるような本でした。