読む前のネタバレは避けようとしていてもこの本に流れるテーマは目や耳に入ってきていた。
そのことを明らかにしてもなお読ませる何かがあるのだと前向きに考えて読んでみた。
が、私にはダメだ。
今から徐々に過去に返りながら状況が見えてくるのはとても興味をひかれたけれどダメだ。
近親相姦に嫌悪感があるのももちろんだけれど花と淳悟がわからない。
いつかもわからない娘の帰りを寒空の下で待つとかその理由が浮かんでくるところなどは好きだが。
良いも悪いもない、どうしてなのさ!というのが正直な感想。
家族を失った花を引き取ろうとする淳悟を心配する大塩のおじさんが「君は欠損家庭だから」と本人に向かっていうのがとても引っ掛かった。
このじいさん、何てデリカシーのないことを言うんだ?と。
しかし読後にはそれが正しかったように思えてしまった。
もちろん実際の世の中ではそんなことないというのはわかってます。
淳悟に限っては大塩さんの見立ては間違ってなかったのかなと感じたということです。
そう感じてしまったのは奥尻から花を連れ帰る淳悟が二人が親戚であることを話す場面で、自分は花が産まれる前奥尻に預けられていたがそれっきり、俺も、あきちゃったしというところ。
あきちゃったし、この言葉に拒否反応。
何にあきたのか、奥尻?竹田の家?花のお母さん?そう思うともう…。
父親を亡くし、存在としての母親も亡くしたこと、大塩のおじさんが本当に手を差し伸べなければならなかったのはその時の淳悟だったのだな、そう気付いたからこその後悔が事件を生んだように思う。
本を読み終えると登場人物の今後や以前を想像するのが好きだったりするのだが、これはできない。
花が淳悟を捜すのか捜さないのかなんてどうでもいい。あれ?ちょっと想像してるじゃないの(笑)。
共感できるかどうかだけを追い求めて本を読んでいるわけではないのに。
もしかしてこの本の本当に評価すべきところを見逃しちゃったのかなあというくらい世間様の評判とはかけ離れていると感じたのでした。
桜庭さんの他の本は結構好きなのになあ。
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