「アジワン」の片野さんなので、犬のかわいさを前面に出したものかと想像したが、なんらかの理由で行き場をなくした犬や猫を保護し、新しい飼い主を探す活動をしている北里大学獣医学部のサークル「犬部」部員の奮闘の日々を綴ったものでした。
獣医学部の学生サークルなので、大学動物病院と提携してたり協力関係にあるのだと思ったが、まったく関係ないらしい。
学生たちの、助けを必要としている動物をなんとかしたい!という気持ちのみで集まり、広がってきたサークルだとか。
保護した動物に新しい飼い主を探すという活動は、最近読んだ「それでも人を愛する犬」と同じだが、そこには学生ならではの葛藤が伝わってきて、保護活動の新たな側面(というか問題点)が見えたように思う。
命あるものをかわいい、愛おしいと思う気持ちが当たり前の彼らは「犬部に預ければOK」と思っていたり、なんとか飼えるよう説得を試みると「じゃあ保健所だ」と脅迫まがいの言葉を吐く飼い主たち苛立ちを隠せない。
でも、その場で部員に面と向かって保健所を口に出すのはまだいい気がする。
例として取り上げられていた、子犬たちと母親を連れてきた飼い主は、部員の説得に飼えるよう、または他の飼い主を探すよう努力してみると約束した足で保健所に直行したと想像される。
絶句である。
命の責任を軽々しく考える人がこんなにも多いとは人として悲しい限りだ。
途中から、学生サークルとして活動するには無理があるのではないかという雰囲気も感じられた。
「できる範囲」を超えてしまうとかえって動物が振り回されて落ち着くどころではないような気がして。
動物を愛するが故、彼らにもその矛盾に辛いものを感じ、休部を選択する。
真剣になればなるほど、ただ集まって保護しているだけではどうにもならないことに気付いたからでしょう。
まだ歴史が浅く、名称を「北里しっぽの会」と変更しての再出発、これからも何度も立ち止まることがあるだろうけれど、命に対する考えさえ間違わなければ大丈夫だと感じた。
ある部員が、動物の命の大切さを説いている時に、じゃあお前は肉や魚は食べないのか?と返されて困惑したエピソードがある。
彼は自分でも答えを見つけるためなのか、肉抜きの日を週一くらいで実践するのだが、これは違うと思う。
食用とそうでないものへの愛情は違うと思う。
食用に育てるのだって愛情がなければ無理な話だろうが、一緒に生活することを選んだ命に向けるものとは異なって当然だと思う。
「世界屠畜紀行」で感じた温度差はこの考えが原因かもしれない。
私の独りよがりだろうか。
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初エッセイだとか。
熱心な読者ではないが、以前聞いたエピソードがたいへん気に入っているので手を出してみた。
そのエピソードとは、雑誌のインタビューで「作家のお友だちは?」と聞かれ、道尾さんは「米澤穂信さん、桜庭一樹さん」と挙げたが、同じ雑誌で米澤さんのところを見たら「いない」と書かれていた、それを見つけた桜庭さんがわざわざ道尾さんに連絡してきたという(笑)。
このエピソード+エッセイで、弾けているのは桜庭さんで道尾さんは普通の人だとわかりました。
度肝を抜かれたのは真ん中にある特別収録の、「緑色のうさぎの話」。
17歳の時に描いた絵本だというが、そのタイトルの字体といい、テーマといい、「何があったんだ?」と当時の彼の肩を揺すりたくなる。
緑色のうさぎさんがそっと花を供える絵は逆にこっちが揺さぶられましたけど。
読み進むと、金髪、長髪、破れたジーンズ、腕に文字が彫ってあり、耳には安全ピンという風貌で、好きな女の子に手作りの押し花栞をプレゼントするという16歳の少年だったことがわかる。
絵本を描くまでの一年間に一体何があったのだ、道尾くん!とやっぱり肩を揺さぶりたくなった。
手作りの押し花というところにヒントが隠されているのかもしれない。
というわけで、ぶっとんだ面白エッセイとは違った意味で印象的な本でした。
①の表紙がアレですから、②は当然のようにリボンをつけた女の子(?)。
画像がないのが残念。
篤姫、龍馬ら歴史的有名人と世相が合体して問題提起(笑)。
お白州員制度、江戸ポイント制度、田端-相真楠(タバターアイマックスと読む)、みんな蹴散らす勢いの画風で愉快。
個人的には、毛利元就の息子が訓練して三本の矢を折る力技を身につけたとか、「そんなに龍馬が好きなら龍馬んちの子になっちゃいなさい」のタイトルが好き。
「機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)」
[新書]
著者:カミ
出版:早川書房
発売日:2010-06-10
価格:¥ 1,365
by ええもん屋.com
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銃声がしたのに、額にナイフの刺さった男が倒れていた。
その男は死を前にして刑事たちに自分の解剖を求める。
犯人探しと殺害方法に難儀する警察の前に現れたのは、アルキメデスの直系子孫、ジュール・アルキメデス博士と彼の発明によるクリク・ロボット。
調査内容をクリク・ロボットにインプットすると、計算機としての能力を発揮してたちどころに数式にして事件を解いてしまうのです。
愉快!
機械探偵がまた絵に描いたような「ロボ」。
手がかりキャプチャー、仮説コック、誤解ストッパー、推理バルブ等の解析的役割と、首長潜望鏡、鼓膜式録音マイク、匂いセンサー等の便利機械の両方を兼ね備えた、まさに動く鑑識ラボだ(指紋レコーダーはどっちだ?)。
CSIはクリク・ロボットを元に作られたんだな(ウソ)。
チロリアンハットとパイプ、チェックのスーツの意味わからなさも高得点。
機械探偵に解決できない事件などないけれど、インプットされた情報から出てくるのって暗号だよね(笑)。
で、博士がそれを解読するという…微妙に二度手間っぽいところも好き。
そういった設定も面白いけれど、警察を含めたキャラクターもへんてこ。
カミ自身によるというイラストもいい。
笑っているうちに終わってしまうのでもったいない気もする。
クリク・ロボットが吐き出した暗号、元はフランス語だから日本語向けにアレンジしているという、訳者のたいへんさもありがたい。
暗号は難しくて解けなかったけど。
「ぼくの名はチェット (名犬チェットと探偵バーニー1) (名犬チェットと探偵バーニー 1)」
[単行本]
著者:スペンサー・クイン
出版:東京創元社
発売日:2010-05-28
価格:¥ 1,785
by ええもん屋.com
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探偵バーニーと相棒のミックス犬チェットが活躍するミステリということなのですが…。
正直、ミステリ部分はどうでもいい(笑)。
もちろん、事件がなくてはチェット(バーニーも)が活躍できないので必要なのはわかっておりますが。
何がいいって、犬目線で書かれているのはさほど珍しいことではないが、このチェットが「犬」なの。
犬としてはお利口さんだけど、すぐ自分の興味(食べ物とか匂いとか)に気がそれちゃうし、気がついたら吠えていて「チェット、何吠えてるんだ?」とバーニーに聞かれて「え~、ボク吠えてたの?」なんてことになる。
そう、チェットが犬として自由なのだ。
もうこれだけで十分愉快だった。
でも…後情報によるとチェットの習性を利用して、バーニーの調査から読者が遠ざけられているのだとか。
そういえば話を聞いている最中にチェットがもてなしに夢中になってるところとかあったなあ。
後情報聞くまでそんな煙幕操作があったなんて気づきもしなかった。←ただの犬バカだから?
この本は「名犬チェットと探偵バーニー」シリーズの1作目らしく、すでに3作めまでの予定が立っているらしい。
優秀な警察犬だったはずのチェットが訓練所を卒業できなかった理由や、陸軍士官学校を卒業したバーニーが探偵になった理由も、少しずつわかってくるのかと思うと楽しみ。
チェットの背中のしこり、心配だよ~。