1年半前に失踪した父の遺体が見つかったとの報告を受けた息子ワーク。何の連絡もない1年半と横暴だった父の性格からその死に悲しみを覚えることはなかったが犯人の心当たりに動揺する。それは父と不仲だった妹ジーン。「妹は精神的に不安定、刑務所に送ることなんてできない」とワークは行動を起こす。しかし警察は不審な動き+莫大な遺産の相続人であることからワークを犯人と目し追い詰めていく。
「川は静かに流れ」に読み応えを感じたジョン・ハートのデビュー作。
崩壊した家族、だからこそ妹を守りたい想い、どん底に突き落とされたかに見えても待っていてくれた再生の灯り、とこちらも読み応えあり。
いきなり死体で登場する父親エズラのヒドイ人ぶりと主人公ワークの後悔しっぱなしの部分に多少閉口するものの、全てはラストに待っている灯りのためと思える。
でもですねえ、ワークの思い込みはどうだろう?
妹が犯人かも、の根拠って仲が悪いからでしょ?
ワークは弁護士なのにもう少し外堀から考えるということはしなかったのかね、警察には「他の線を考えろ」って言うくせに。
仲の悪さの根深さを知っているからともいえるのでしょうけども。
それに、奥さんのことホントに見てない、読んでるこっちは何となく想像ついたぞ(笑)。悪人だったけど奥さんには同情もするなあ。
つまり、妹の見立てどおり、ワークは弁護士に向いていないということが語られていたのかもしれない。
そして気になるのは「川は静かに流れ」と読む順番を違えていたら自分はどんな感想持っただろう、ということ。共通点多いですから。
崩壊した家庭、殺人のヌレギヌ、過去の女性、心の支えとなる隣人…とね。
何よりも最大の共通点は主人公の思い込みの強さ。
聞いたり、調べたりの結果でなく、思い込みで突っ走る姿が重なる。
妹が精神的に不安定だから肝心なことを訊ねられなかったというのもあるかもしれないが、そのわりには妹の同居人の過去と事件への関わりを示唆する件はまさに突っ走り型。
今後も著者は崩壊からの再生を書き続けるのかもしれない。
でも今度はもう少し思い込みすぎない主人公を読んでみたい気もする。
最低の人間だけど父、というワークの気持ちは身に沁みたなあ…(笑)。
PR
選挙が近くなると個人的に特定の政党や候補者への想いを語ることが御法度になる国にいるのでとても興味深かった。
例えば予備選でヒラリー・クリントンとの戦いに苦しんでいたオバマがノースカロライナ大で草バスケを楽しんだことの意味。
一見、息抜きに思えることまでもが戦略の一部かもしれないとは想像が及ばない世界だ。
Super!drama TVで放送中の「ホワイトハウス(原題:The West Wing)」を見ていると重箱の隅をつついているだけのような声や、「そんなことまで」というようなイメージへの気遣いに絶句することもしばしばなのでこの話題は新鮮なような、驚きのような不思議な感じだった。
9.11後のワールドシリーズ、防弾チョッキを着て始球式の練習をするブッシュの話、バートレット大統領と側近レオの確執思い出しちゃったよ。今、レオはああだし、大統領もあんなだし(笑)。
プロスポーツと地域のつながり、それを利用する政治家やスポーツビジネス戦略といったことをわかりやすく伝えてくれる本でありました。
そしてそれだけ注目されるスポーツであるが故にからんでくるドーピングにも触れられていますがそれはコチラで読みたいな、と(笑)。
「アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (SHUEISHA PB SERIES)」
[単行本(ソフトカバー)]
著者:町山智浩
出版:集英社
発売日:2009-02-25
価格:¥ 1,000
by ええもん屋.com
[単行本(ソフトカバー)]
著者:町山智浩
出版:集英社
発売日:2009-02-25
価格:¥ 1,000
by ええもん屋.com
26編からなる短編集。
「いい話」の連載だったはずがどんどんブラックになってしまった、とあとがきで告白されています。
私はブラックな話は大好き。バリー・ユアグローとか。
でもこれはどうだろう?不思議な話ではあるものの、ブラックというには何かが邪魔をしているような気がする。
「先生と僕」で結構えげつない話を読んでいるので坂木さんの作風というわけでもないと思う。
「あるものを繰り返し登場させることで読んだ人に刷り込みをしかけた、目にするたび気になるだろう、くくくっ(大意)」とあとがきにあるが、あれ?私気にしてないよ(笑)。
もうびっくり、図書館に行ったら「新しく入った本」のところに並んでるんですよ。
え、誰も予約してないの?手違いで並べられてるのでは?と、貸し出しカウンターで「すみません、予約本でした」と言われることまで覚悟したのにあっさり借りられた。
利用図書館で登美彦氏の本は貸し出し頻度が激しく、あまり棚に並んでいない。
みなさん、予約やリクエストせず、借りられる本を借りるおとなしい方々ばかりなのだろうか。
京都の大学から能登の実験所へ出向かされた大学院生守田一郎が、親友、研究室の厄介なお姉様、家庭教師の元生徒、作家・森見登美彦先生、妹、と書きに書きまくった文通の日々。
文通といっても相手からの返信は本には書かれず、書かれているのは守田からのものだけ。
はじめは「もしかして本当は返事など来ず、守田の脳内文通?」と少し寒くなった。
しかし第二話に入ると最初に親友に語った出来事が厄介なお姉様にはどう語られたのか、また微妙に違った側面が見えてくる。
第三話以降も同様に、同じ出来事の報告が相手が違うことで守田の伝え方が異なっているのが好き。
相手との距離感や心の内が感じられるし、時につく微妙なウソも加わってパラレルワールドの雰囲気だ。
一方からの手紙しかないのに個々との応酬が匂い立つのもまたすごい。
全ては愛する女性へ想いを伝えるべくの武者修行、そして見つけた「恋文の技術」、これなら彼女にも伝わったはず、と守田を応援したい。
六人力だもの(笑)。
悪ふざけと錯覚しつつ、恋や将来への不安をどうにかしていく、守田の成長の記録。
しかし、ベンチャー企業好きだよね。
ある小学校で男子生徒がクラスメイトを毒殺し、自らも同じ毒で自殺するという事件が起きる。すっきりと解明されることもなく被疑者死亡で事件は幕を閉じる。30年後、ある人物が当時の事件関係者に話を聞きに廻りだしその時にはわからなかった事件の側面が見え、事件の背景にあった真実にたどり着く。
インタビュー形式で進んでいく話は好き。
同じ事を体験したのにも関わらずその感じ方は人様々、人物設定というわけではないがどういうキャラクターなのか見えてくるし。
毒殺事件の真相を探るインタビュー小説なのだと思っていたから、その奥に隠された歪んだ情熱が見えてきてからの展開は想像できなかった。
小学6年生にそんな計算が…と思わないでもない。
全てがその時に、ではなくそれまでの人生通じてなのは承知してるけど。
一旦クライマックスを迎えたかに思えたところでの急激な話題転換にもびっくり。
乗せられて質問答えちゃってるよ、この人!というのはつっこみどころであるのと同時に真相の真相につながっていたことにまたびっくり。
恩田陸「ユージニア」、湊かなえ「告白」を想起させる点がマイナスポイント、と本の雑誌4月号で見たがどちらも未読の私には影響なかったようだ。
「告白」
[単行本]
著者:湊 かなえ
出版:双葉社
発売日:2008-08-05
価格:¥ 1,470
[単行本]
著者:湊 かなえ
出版:双葉社
発売日:2008-08-05
価格:¥ 1,470
「本の雑誌 310号」
[単行本(ソフトカバー)]
著者:本の雑誌編集部
出版:本の雑誌社
発売日:2009-03-11
価格:¥ 680
[単行本(ソフトカバー)]
著者:本の雑誌編集部
出版:本の雑誌社
発売日:2009-03-11
価格:¥ 680