お国柄を知る上で、お弁当というのは想像よりも重要な見方かもしれない。
例えば、日本をはじめアジアではお弁当は当たり前のものだが、家から昼のためにごはんを持って出かけるという習慣がないという国もある。
それは昼休みをたっぷりとるからであったり、あたたかいものを食べるからであったり、と食文化のなかでもお弁当を切り取ってみてみるのは面白いことかも。
副題にあるようなレシピ本としては物足りないが、お弁当のおかず=ポピュラーな家庭料理と見ると、ふむふむ、お~という感じ。
食べるものだけでなく、外側のお弁当箱や水筒を紹介しているのも楽しい。
ドカ弁やら重箱系やら、きれいな細工を施したカゴものまで。
最も不思議で興味をもったのが、辛いもの好き国として有名なブータンの籠状のお弁当箱。
入れ物と蓋、二つの籠を重ね合わせているだけなのに、汁物を入れてもこぼれないのだとか。
竹を二重に編んでいるらしいがその密閉力、恐るべし。
インドのお弁当配達人(ダバワラ)の話は知っていたが、ある配達人に密着して手順を見せてもらえたのはうれしい。
でもねえ…回収までするの?食べた人が持って帰ればいいような気もするけど(笑)。
表紙だけを見るとレシピ本と思ってしまうが、中味はお弁当に関する読み物。
後半には、いろんな国の方々のお弁当に関する思い出が集められていて、こっちの方が読みどころだと思う。
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ラブラドールのロダンと、ダンナさん、オクさん、おじょうさんとの楽しくてあったかい生活が大好き。
内田さんのまんがは「シロと歩けば」を先に知り、それからロダンも読むようになった。
ロダンもシロも共通しているのは、犬であること。
まんがの都合上、考えていることは文字になってはいるけれど、犬の思考で、判断で、行動、へんに人っぽくないのがまた好きなところだ。
ロダンの口調はおっさんクサイけれど、やることなすこと本当のワンコなのです。
解説で斉藤由貴さんも書かれていますが、ロダンは楽しいことも(散歩、ごはん)、ちょっとつまらないことも(買い物、雨)、同じように待っているのです、そういうものとして待っている健気なところにきゅ~っとなります。
内田さんが犬のこと大好きだろうな、と感じるのには犬のポーズも関係している。
横になって寝ている時に片前足を顔の下に敷いているとか、胸を起こして座っている時(スフィンクスのポーズ)に前足クロスさせているとか、すっごく犬のしぐさがリアルだと思う。
この本で、なにもしてないようにみえて足を組み変えるロダンが見られて幸せだった(笑)。
今回読んだのは「夏」だけれど、今までに刊行された1~5巻を四季に分けて編集しなおして春・夏・秋・冬の四冊の文庫となったらしい。この「夏」、巻末にはロダンが「シロと歩けば」にゲスト出演したものも掲載されているので、シロファンにも嬉しいこと間違いなし。
「ロダンのココロ 夏 (朝日文庫)」
[文庫]
著者:内田 かずひろ
出版:朝日新聞出版
発売日:2009-06-05
価格:¥ 630
[文庫]
著者:内田 かずひろ
出版:朝日新聞出版
発売日:2009-06-05
価格:¥ 630
「ロダンのココロ 秋 (朝日文庫)」
[文庫]
著者:内田 かずひろ
出版:朝日新聞出版
発売日:2009-09-04
価格:¥ 630
[文庫]
著者:内田 かずひろ
出版:朝日新聞出版
発売日:2009-09-04
価格:¥ 630
「ロダンのココロ 冬 (朝日文庫)」
[文庫]
著者:内田 かずひろ
出版:朝日新聞出版
発売日:2009-11-06
価格:¥ 630
[文庫]
著者:内田 かずひろ
出版:朝日新聞出版
発売日:2009-11-06
価格:¥ 630
是非、「シロと歩けば」もまた入手しやすくして欲しいです。
美人でノンキャリアなのに30歳前にして警部補になった姫川玲子シリーズの一作目。
こういう事件あるだろうなと思うものの、どこか現実味が薄く、私は玲子のように犯人に対して泣いてあげることはできない。
犯行に至るポリシーの違いによる分裂でも、人を殺したことには代わりないものなあ。
玲子以上の凄惨な過去を持ち、人を殺すことは自分と同じ血を確認して自分が人間であると感じたいというエフは、自傷行為が枝分かれしたかのような、精神の治療を要するものだと思うが。
もっとわからないのは上しか知らないお坊ちゃまの殺人遊戯。
自分は生きててよかった、次回はわからないけれど、というのがストロベリーナイトのしくみ。
このお坊ちゃまだけかと思いきや、そのしくみに魅せられたものが大勢いるというのが…ね。
事件にはさっぱり現実味を感じられなかったけれど(嫌なものは見たくないからか?)、玲子やとりまくキャラクターには体温があったかな。
でも玲子の過去とそこから立ち上がった経緯にはやっぱりな、という気が。
立ち直ることへの応援なのかもしれないが、設定が安易のような…。
今後の玲子を成長させる出発点なのだと考えれば必要なことなのかも。
玲子班の面々と共に、シリーズとはそういうものなのかもしれない。
そういう意味では機会があれが続きも読んでみたい、かな?
お初の初野さん、って(笑)。
チカが高校一年生の時の思い出を語るというふうに進む連作短編集。
吹奏楽部のチカは顧問の草壁先生(男性)に恋してる。
そしてライバルは幼なじみにして高校で再会した、ハルタ(男の子)。
微妙なライバル心と協定関係が、強い友情のうえに成り立っているのがお見事。
という具合に青春ミステリとしかいいようがない設定。
しかし、一話めの「結晶泥棒」くらいでしょうか、内容的にも青春ミステリと言えるのは。
他は殺人こそ起きないけれど、謎の本質は深くて辛くて切なくて…と。
一番好きな、本のタイトルにもなっている「退出ゲーム」にしても、演劇部VS吹奏楽部がみんなの笑いを取りながら進むけれど、そこに本当にあったのは個人のアイデンティティや他国の政策に基づいたものだもの。
ハルタの情報網が想像できないというのもある。
最後の「エレファント・ブレス」にしてもそう。
これはハルタどころか、マレン、萩本兄弟もでしょ?
今時の高校生は、ちゃらちゃらしているようでいて世界的にも歴史的にもアンテナ張り巡らされているということでしょうか。
そういう面も含めて、1話ずつ増えていく神秘的なパーティーの面々が楽しみだったりする。
パトリック&アンジーのシリーズ、とうとう五つ読んでしまった。
現在書かれているものではこれが最後。
あとがきに「ミスティック・リバー」の後にもう一つノン・シリーズ(「シャッター・アイランド」のことか?)を書いたらまた書くつもり、とあるがこの文庫が出版されたのは2002年の9月。「運命の日」と短編集「コーパスへの道」の邦訳は出たものの、このシリーズが書かれたという情報はない。
最初は続きが読みたい派だったけれど、今回シリーズ通して再読してみて微妙に変化。
これがパトリックとアンジーの最後でもいいかもしれない、これでもまだこの仕事を続けようとする彼らは逆に見たくないような気もする。
パトリックは小さな仕事だけしているかもしれない。
でも、電話をもらったのに連絡をとらなかった罪悪感から無報酬でものめりこむような男だもの、続けていないはずはない。
よくよく考えてみると今回の事件も、前作「愛しき者はすべて去りゆく」と微妙に重なる部分があるわけで、それに対しての二人の想いが少々足りないように感じる。
あのことが原因で離れることになったのに、再会して思い出さずにはいられない事を目の当たりにしたのに、終盤の激しい銃撃と合わせて、事件の本筋ではなかったから、というにはさみしいものが。
前作を映画を含めて好きすぎるからだろうか。
ということで私にとって「雨に祈りを」は、シリーズを通じて読むからこそブッバとの友情、アンジーとの意思のつながり、そういったものが沁みてくるのだ、という本ですね。