「それでも人を愛する犬」、「犬部!」と同様のテーマ。
発行順ではこの本が一番早いようですけれども。
保護団体の保護した犬がどうやって新しい家庭に出会えたのか、その様子を取材したもの。
みんな幸せな家庭に迎えられている。
しかし、著者も書いているようにそれは本当に幸運だった一部にすぎない。
引き取り手もなく消えていった命のほうがたくさんであることを伝えるために、定時定点回収や犬たちが最期を迎えるセンターでその最期を目の当たりにした様子も書かれている。
自分はまだまだ犬と生活できるような状態ではないので苦しくなることだけしかできないのは歯がゆい。
印象的だったのは、元の飼い主の印象なのか、作業服姿、銀色の車に激しく反応するくるみちゃんの話。
捨てられたわけではなく、病死と病気での突然の別れ。
楽しい思い出がいっぱいだったのだろう。
これからどんなに愛情を注がれてもくるみちゃんには前の飼い主との思い出は決して消えるものではないのだと痛感。
だからこそ、保護犬だからと預かり宅が何度も変わるのはかえってつらく感じる。
そこが「犬部!」で共感できなかったところかな。
学生の本分は学業、それを優先すればできることとできないことが生じてくるのは当然。
でも相手は命をもったもの。
担当者から担当者へと引き継ぐ心は少しばかり受け入れ難い。
ちょっと目を離した隙に命をおとしたエピソードでは、前担当と現担当の敢えて気持ちを多く入れないところに難しさを感じもした。
「終わりに」で著者は、行き場のない犬たちに手を差しのべる人が増えてくれたら…の想いで始めた連載だったが、飼い主が増えるということは虐待を受けたり捨てられる犬も増える可能性があると意識が変わったという。
共に生きる喜びよりもそれによって生じる厳しさを伝えるべきではと思われたようだ。
結果、命を預かるという尊いことは幸せを連れてきてくれるけれど、生きているということは人と同じように病気もすれば年も取るということを、どちらか一方だけを強調することなく伝えられているような気がする。
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