病気の妻を抱えたグザヴィエ・ローモンは妻殺しで罪を問われているランベールの事件を担当する裁判長。ランベールは無実を主張するが誰も言い分を正面から受け止めようとしない。しかしローモンはランベールが殺したとの確信が持てず、様々な可能性を探る。審理の結果は…?
これは裁判の行く末に固唾を呑むミステリではない。
ランベールと殺された妻の周辺を知れば知るほどに揺れ動くローモンの心理が見もの。
奔放なランベールの妻とある出来事がきっかけで心を壊してしまった自分の妻がシンクロしたかのような不思議な状態であったのかもしれない。
ローモンの妻が5年もの間伏せっている理由もランベールの話と平行するように語られることで心の揺れをリアルに感じる。
裁判は確かに終わりを迎えるが、それが真実なのかは判断できない。
先にも書いたがこれは裁判小説ではなくそれに関わる人の心理ドラマ。
裁判終了後におとずれた重大な変化をどう受け止め決心するかのローモンを見せるための法廷だったように思える。
この決心には一瞬驚かされるが彼の二重の解放感を素直に見られる自分がいる。
著者はメグレ警視シリーズで有名。
読んだことはなかったのだがこんな心理ドラマを書かれている方だったとは。
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