アナ13歳。白血病の姉ケイトのドナーとして期待されこの世に生まれた。
臍帯血提供、輸血、骨髄移植、とケイトに必要で与えられるものは与えてきた。
それでもケイトの病状は進み、腎臓移植が必要となる。
だがアナはこれを拒否し、自分の身体に対する権利を主張し両親を訴える。
アナはデザイナー・ベイビーとして誕生した。
(このデザイナー・ベイビーの誕生はフィクションでいいんですよね?)
産まれてきた子どもがたまたまドナーとして最適だった、なら範疇。
でもドナーにするために産まれたとなっては穏やかでない。
母親は「ケイトもアナも(お兄さんのジェシーも)同じように愛している」としきりに主張するがそうは思えない。
誕生の仕方がそもそも違う。
アナへの愛は、ケイトのドナーとして協力してくれるからということがつきまとう。
この母親の気持ちには共感できなかったな。
アナの気持ちを尊重するための裁判かと思わせて、真実は他のところ。
アナは代弁者に過ぎなかった。
その真相もふまえ、アナの主張が受け入れられるかたちで裁判は終了。
しかしこのあとの展開には皮肉すぎて言葉もない。
裁判せずに腎臓を提供していたら?
主張が認められても移植を承諾していたら?
自分が代弁者であることを告白するのなら裁判で無用に傷つけ合うことはなかったんじゃないのか?
様々な思いが渦巻くエンディングだった。
海外ドラマ好きとしてはCSIのエピソードを思い出す。
ドナーとしてしか見られない妹を不憫に思った兄の犯行を家族で必死に隠そうと演じた事件だった。
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「TVブロス」の松尾スズキさんのページで、奥さんが最近読んだ本として書かれていた。
特殊方面のドラマ好きとしては、俄然興味を惹かれるわけで。
米国で死刑囚は刑の執行方法と最後の食事(量も)をリクエストできるという。
その最後の食事をイラストで紹介した本。
罪状と執行方法は書かれているが「死刑囚が何を食べたか」がメインなので、彼らの事件を起こした背景等はサラッとしている。
コーラ、フライドポテト、ハンバーガーなんて米国らしさの表れみたいなものが多いがこだわりのある食事の人も。
なかには本当に一食分なのか?と驚くほどの量をリクエストしている人もいる。
米国のファスト・フードのサイズは日本とは違うと聞いてはいるが、それにしても。
最後が強調され、強迫観念のようにあれもこれもと選んでしまうのだろうか。
そんな人もいるかもしれないが胃薬を頼んでいるヤツこいつは違うな(笑)。
無意識なのか意識してなのか、肉物だけでなくサラダ等の野菜もキチンと要求している傾向がある。
バランスを考えているのか、ちょっと不思議な感じ。
巻末に付録として家庭でも簡単にできる「刑務所一般食レシピ」もある。
ベジタリアン用のメニューもあるとのこと。
もう一つ付録として、収監される際の手引きとして(笑)
処刑方法や最後の食事に関する州差を調べた「州別刑務所ミシュラン」。
参考になるのかなあ。興味はあるけれど。
ちなみにイリノイ州が最高待遇でオススメらしい。
重罪を犯し、反省していてもしていなくても人は何かを食べなければならない。
どんな罪人にも権利がある。サイードあたりが言及しそう。彼の場合はもっと別なところからか。
OZでは囚人が日常の食事を作っているけれど、本には刑務所の料理人が作るとある。
やはりドラマはフィクションか。トラブルの種になること間違いないもの。
あまりにも有名な本。
「百年の誤読」という本を読んで興味をもったので読んでみた。(この本は過去百年のベストセラーを岡野宏文、豊崎由美両氏が検証している。ベストセラーに良書なし?)
ユダヤ人が強制収容所へ送られていた時代。
その迫害を避けるため隠れて生活していた家族の中の一人、アンネが書いた日記。
これくらいしか知らなかった。
乱暴に言ってしまえば、苦労話というかお涙ものという印象だった。
でも、読んでびっくり。
本当に13歳かそこらの少女が書いたものなのか、なんと辛辣な。
初めて出版された当時には削られていた部分があったらしい。
性に関することとか、家族や一緒に隠れて生活していた人に対しての感情とか。
性に関することは時代的にあからさまに語られていなかったからでしょう。
でも、一緒に生活していた人たちへ対する感情、とりわけ家族、お母さんに対してかなりの表現である。
たった一人の生き残りだったお父さんが他の人は他界しているにもかかわらず、削除した気持ちもわかる。
それほどアンネは厳しい。
「お母さんのことは愛している。でもそれは家族だから。人間としては嫌い」だそうだ。
初版を読んでないので、家族のことをどこまで書いていたのかわからないけど。
書いていた日記を公開したいと思い、清書しながら書いたとされる。
それでも、この激しい部分は残されていることに胸が痛くなる。
家庭以外に学校や友達といった別の世界があれば、ここまでではなかっただろうに。
別にアンネがみんなを憎んでいたというわけではない。
2年にわたって外界から遮断されひとつところに鼻を突き合わせていたら、とても平穏ではいられないだろう。
私は一方的に子供らしくないと感じたけれど、逆に言えば子供だからなのかなあ。
ちょっと恐かった。
もちろん、かわいらしいところもある。
何が欲しいとかリストを書き連ねたり。外の世界を夢見たり。
戦争が引き起こした悲劇、もちろん伝わってくる。
そのせいで隠れ家生活を余儀なくされたのだし。
戦争の時代を背景に書かれたというよりも、日記の背景に戦争があったような、うまくいえないけど。
もちろん戦争がなければ、ユダヤ人の迫害がなければ書かれなかっただろうけど。
もっと早い時期に読んでおくべきだった。