あまりにも有名な本。
「百年の誤読」という本を読んで興味をもったので読んでみた。(この本は過去百年のベストセラーを岡野宏文、豊崎由美両氏が検証している。ベストセラーに良書なし?)
ユダヤ人が強制収容所へ送られていた時代。
その迫害を避けるため隠れて生活していた家族の中の一人、アンネが書いた日記。
これくらいしか知らなかった。
乱暴に言ってしまえば、苦労話というかお涙ものという印象だった。
でも、読んでびっくり。
本当に13歳かそこらの少女が書いたものなのか、なんと辛辣な。
初めて出版された当時には削られていた部分があったらしい。
性に関することとか、家族や一緒に隠れて生活していた人に対しての感情とか。
性に関することは時代的にあからさまに語られていなかったからでしょう。
でも、一緒に生活していた人たちへ対する感情、とりわけ家族、お母さんに対してかなりの表現である。
たった一人の生き残りだったお父さんが他の人は他界しているにもかかわらず、削除した気持ちもわかる。
それほどアンネは厳しい。
「お母さんのことは愛している。でもそれは家族だから。人間としては嫌い」だそうだ。
初版を読んでないので、家族のことをどこまで書いていたのかわからないけど。
書いていた日記を公開したいと思い、清書しながら書いたとされる。
それでも、この激しい部分は残されていることに胸が痛くなる。
家庭以外に学校や友達といった別の世界があれば、ここまでではなかっただろうに。
別にアンネがみんなを憎んでいたというわけではない。
2年にわたって外界から遮断されひとつところに鼻を突き合わせていたら、とても平穏ではいられないだろう。
私は一方的に子供らしくないと感じたけれど、逆に言えば子供だからなのかなあ。
ちょっと恐かった。
もちろん、かわいらしいところもある。
何が欲しいとかリストを書き連ねたり。外の世界を夢見たり。
戦争が引き起こした悲劇、もちろん伝わってくる。
そのせいで隠れ家生活を余儀なくされたのだし。
戦争の時代を背景に書かれたというよりも、日記の背景に戦争があったような、うまくいえないけど。
もちろん戦争がなければ、ユダヤ人の迫害がなければ書かれなかっただろうけど。
もっと早い時期に読んでおくべきだった。
PR
この記事にコメントする