のら犬ローヴァーの生活を追った短編集。
ローヴァー、かっこいい!
群れず、宿を持たず、しかし困ったものには手を差し伸べる、そんな犬なのですよ、ローヴァーは。
助けが必要な犬には本犬が望むのなら寄り添ってあげ、決してべたべたしすぎないところなど、まさに理想の男(笑)。
タイトルやイラストを見ると、童話のような気もするが、書かれていることは人間界の縮図で時に手厳しく、時に優しく、ほのぼのしたり苦しくなったり、実に奥深い。
最近読んだ「パーフェクト・ブルー」や「心とろかすような」では、主人公の犬が人間の言葉を完全に理解していたが、ローヴァーでは犬と人間は通じ合ってはいない。
だからこそ、語られる命の尊さや無駄遣い、環境問題などがリアルに感じられるのかも。
印象的だったのは「幸運」。
寝床も食べ物も、運動も十分、いつもかまってくれる飼い主に恵まれたロールシャッハとの出会い。
私からするとロールシャッハはなんて幸せな、いい飼い主に恵まれたなあと思える。
でもローヴァーは、門が開いているのにそこから飛び出す犬らしさを忘れてしまったロールシャッハを気の毒に思っている。
人に飼われることは犬の本能を邪魔しているのかな、と考えさせられる。
ロールシャッハが、ボール投げ遊びについて飼い主のことを「彼はこの遊びに夢中でね」というのはちょっと思い当たる節がないでもないなあ(笑)。
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