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本の感想
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青年のための読書クラブ
桜庭 一樹
新潮社
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2019年に変革を迎えることとなるが、聖マリアナ学園は100年の歴史をもつ幼稚舎からの女子学園。100年の校史には残らない裏の歴史を記録することがはみだしものの「読書クラブ」。 そのうちの5つのエピソードがこの本。

熱病に浮かされたかのような物語。
その時代、時代の女子高生だからでしかありえない美しさと醜さと残酷さと親愛が聖マリアナ学園というひとつの世界で繰り広げらる。
「奇妙な旅人」や「一番星」でみられる、新聞部と放送部のスクープ合戦、ネタの売込み、メディアを利用しての心理作戦といったものはそのまま社会の縮図。
学校が社会の全てという錯覚を自分も経験したと思う。
女子校というのは著者がよく使う「異形」の存在であるのかも。

女子学生を形容するのに「下衆な親父がそのままクリーム色の乙女の制服を着たような」ってのはどうかとも思うが、その様が頭に浮かんでくるのも事実(笑)。
容赦ない表現は隔絶しているからではなく、そういうものとして存在している証拠。それこそ「読書クラブ」と同意なのかもしれない。
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少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)
桜庭 一樹
東京創元社
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中学2年生の大西葵の家庭は複雑。母は市場でパート、義父は漁師だったが怪我をしてからは飲んだくれて暴れるだけ。その反動で学校ではおちゃらけてみんなの注目を集める存在。楽しい学校も夏休みを迎えてしまった。その夏、葵のそばにいたのは不思議な魅力をまとった図書委員宮乃下静香だけだった。

「少女七竈~」で気になったので過去作品を。
タイトルから女には向かない職業 (ハヤカワ・ミステリ文庫)を連想するから、コーデリアみたいに葵が成長していく話なのかなと思ったら大間違い。成長したといえばそうなのだろうけれどポイントはもっと別のところ。
書き出しで葵は人を二人殺したことを告白する。人を殺してしまったことで自分が死にそうなくらい怯えている。人殺しは少女には向かない、そういうお話。
書き出しを見ると静香が葵をそそのかしたかのようだが、二人がたまたま呼び合ってしまった結果としての人殺し。お互いに不安定な家庭でより所が欲しい境遇。それなのに誰も自分たちをそう見てはくれない。楽しい夏を過ごした果てに人の死に出会ってしまい、また仲良くするには人の死が必要と考えてしまう静香とそれに怯える葵が対照的。
誰かが手を差し伸べていたならありえなかった。実際、心に触れようと歩み寄ってくれたおじさん警察官には告白できたんだもの。
苦言を呈す箇所は、土産物屋でそんな危険なものを中学生に売ったということかな(笑)。
募集広告に応募して別人になる訓練、演じる性格づけ、遺言を書き換えさせることが目的等静香の嘘の告白は「わらの女」だな~と思っていたらその通り、静香のリュックの中のテキストでした。
少女七竈と七人の可愛そうな大人
桜庭 一樹
角川書店
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平凡な小学校教師、川村優奈25歳がある朝突然「辻斬りのように」男遊びがしたい、との想いにとらわれ実行する。そして未婚のまま子どもを授かる。産まれた一人娘、川村七竈がその異形と蔑むかんばせを受け止め大人へと歩みだす物語。

桜庭一樹さんは「男性?」という印象しかなかったが、年末に出るランキング本で女性だと知った次第(苦笑)。かなりの話題作を書かれているので今頃気になりだし読んでみた。
まず気になるのは文体。直前に「本の雑誌 1月号」で池上冬樹さんが桜庭さんの文章感覚が気になる、と書かれていたのを読んだせいかもしれない。他の小説を読んでいないのでこれは七竈を表現するために必要な言い回しだったのかなと思う。
一番愛されたい人はそばにいてくれず、愛していたい人とはとうてい一緒にいられないことを受け入れなければならない七竈の静かな落胆と希望、重さと清々しさが同居したようななんとも言い難い余韻。冒頭の母優奈が辻斬りになったのは突然のことのようで単なる性衝動のようで理解不能だったが、実はとても深い切ない意味のあること。その辻斬りの結果故に七竈は受け入れなければならない事実につきまとわれるわけで。「わたしの視界から永遠に消えた」に二人の決意の重みが伝わってくる。

七竈の家で警察犬を引退したビショップが飼われることになる。 ビショップ視点のところは「ベルカ、吠えないのか?」を想い起こさせる。擬人化せずに犬は犬のところとか。これがまた心を落ち着かなくする。自分は下から二番目を無意識に実践しているところ、死の臭いを感じてしまうところ、何をとってもまだ立ち直れていない自分を見つけてしまう。ビショップは老犬で体力が落ちてきただけで死なんか迎えない。でも私には何年先になるのかわからないがこの後に待っていることの方が辛い。老いで命が尽きるのならそれはそれで幸せなこと、病気とは違うと思うが。臭いを嗅がせてくれるところなんてどうしようもない。そんなこんなで私には涙の小説だった。
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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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