主人公のボクさんは40歳。
幼い頃の高熱が原因で知能は小学校高学年程度で停滞している。
ゆっくりでも確実に用事はこなせる。
息子の将来を案じ、お母さんはアパートの経営という仕事を残して逝く。
ボクさんは持ち前の根気と丁寧さで修繕等何でも片付けてしまう。
当然、入居者や近所の人達の暖かい援助もある。
そんな愛情に包まれて暮らしていたボクさんの生活が一変する。
外壁の塗装作業中に窓から入居者の死体を発見してしまう。
そのショックで梯子から落ち、頭を打って病院へ運ばれる。
意識を取り戻すとやけに視界が明るい。
段階をゆっくりと踏まなければできなかったことがすらすらとできるようになる。
考えや言葉もどんどん浮かんでくる。
頭を打ったことで脳の停滞していた部分が活性化したかのよう。
それだけではなく、入居者の殺人事件後住民が全員消えてしまう。
おまけに全員が身元を偽っていた…
みんなが親切で頭の回転の遅いことを馬鹿にしたり、それを利用してやろうなんて人はいなくて幸せに暮らしていた。
それが殺人事件を境に知らないでいたことを知ってしまう。
何故身元を偽っていたのか、親切な幼なじみの抱えていたもの…
殺人事件の犯人は誰か?のミステリーであり、愚鈍でなくなったボクさんの冒険譚でもある。
事件が一応の解決を迎えると、そこにはある結末が待っていた。
「アルジャーノンに花束を」を連想させる。優しくあたたかいけれど切ないお話。
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