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本の感想
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身の上話
「身の上話」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:佐藤正午
 出版:光文社
 発売日:2009-07-18
 価格:¥ 1,680
 by ええもん屋.com

語り手である夫は妻の何を伝えたいのか、切迫したのとは異質だが、終始ざわざわするよな緊張感。
最後のページで、この告白の本当の理由が見える。
そこにはそれまでになかった体温というものを感じることができた。
結果だけみると正しいことを選んだにすぎないが、妻の人生を、自分のように死んだまま生きさせないようにしたという決断。
そうわかると途中で死体遺棄に手を貸した、殺人を予想しながら口をつぐんだことへの悪意のこもった告発かもしれないとも思えたそれまでが違った形に見えてくる。
東京へ出た理由、夏休みの前倒しのような初山との会話等からわかるように、自分の仕出かしたことをひとつもわかっていなかったミチルも夫の告発の真意を得て、着のみ着のままで旅立つような人生は終わりにできるのだろう。
まったく自分とは接点のなかった地方都市の女性が宝くじに高額当選したことで、隠し通すつもりだった闇を露見させることになった男の哀しくも希望のある身の上話でありました。
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