1943年にアリューシャン列島に取り残された4頭の軍用犬。
1頭は元の主に忠実で敵が島に乗り込んできたときに地雷原に誘い込んで自身も爆死。
残りの3頭の血がこの物語の主人公。
今世紀に起こった戦争と関わりあいながら、あちこちに広がったこの3頭の血統が奇妙な巡り会わせをしていく。
犬だから寿命も短いし戦争の世でもあるから簡単に死ぬ。そして生まれる。
それが何世代も繰り返され、偶然の血の再会があり、助けられたり、義理の親子になったりと犬の血脈大河ドラマ。
この犬のドラマの間にはさまれる、老人の話。彼も犬を飼っていて(?)人間を攻撃するように訓練している。
この老人の目的は何なのか。
老人のところには誘拐された日本人ヤクザの娘もいるが、この娘がまた筋金入ってる。
彼女が犬になっていく様は格好良くもある。
近代史は不勉強なので、どうしても犬の物語のほうに心が傾く。
描かれる1頭1頭の境遇に入り込んでしまう。
「イヌよ、イヌよ」と語りかける、詩を思わせるような文体も原因かも。
潔さに目頭が熱くなったり、生さぬ仲で芽生える母性愛、親子愛に揺さぶられる。
擬人化はされていない。犬は犬である。
注文をつけるとすると、豊崎由美さんも書いていましたが、犬の系図があるといいんですけどね。
私の頭が悪いのか把握しきれなくなります。
古川さんの本は始めて読んだ。
ちょっとヘビーな印象があったので今まで敬遠していたが、他の本にも興味を持ちました。
PR
この記事にコメントする