大倉さんといえば、落語シリーズをはじめ、楽しく読める本という印象でしたがこれは骨太。
見返しにあるとおり新境地といった感じだ。
山のことは知らなくても、肝心なのは自分を取り戻す草庭なので問題なし。
過去を思い返す場面で、安西と恋人の牧野が、一人を助けるために三人が危険を犯し、結果一人死亡三人重傷という遭難事故に対して意見を闘わせるところがある。
例え一人が動けなくなっても二重遭難は絶対に防がなければならないと主張する安西と、何があっても絶対に助けたい牧野は真っ向から対立する。
この想いが事件の始まりだったとは…。
安西も、それを聞いていた草庭も、なんともいえない想いを抱いただろう。
だからといってやっていいわけではない。
それがわからなかったとは思えないので承知のうえの行動だったのだろう、だからちぐはぐに見える部分があるのかも、と自分は感じる。
初めて知ったが大倉さんは学生時代に山岳同好会に所属していたとか。
いつか山岳ミステリを、との想いで書き込まれたのがこの「聖域」。
そして今度は山岳捜査官を主人公にしたものも書かれたらしい。
「聖域」に出てきた松山さんかな?と思ったけれどどうやら名前が違うようで少し残念。
もうちょっと松山さんを読みたかったような気がするので。
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