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本の感想
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累犯障害者
累犯障害者
posted with amazlet at 08.08.10
山本 譲司
新潮社
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著者は秘書給与詐欺事件で実刑判決を受けたあの方。
その時の服役経験から書かれたのがこの本。
加害者に障害があるとわかると報道する側はほとんどがそこでストップしてしまう。
この本はそこから先をほんの一部だけだが紹介している。

恐喝の被害者が聾唖者、恐喝も手話で行われていたという事件に驚いた覚えがあるが真実はもっと驚くことの連続。
自分と世間、行政の無知にいたたまれなくなる。
例えば、聴覚障害者は耳が不自由なだけで他の生活には支障がないと思っていた。
思っていたというよりも、考えてもみなかったというほうが正解。
聴覚が不自由ということはそこから入ってくる情報が得られないということ。
幼い頃からであれば言葉もままならない。
その状態でこの社会を生きるにはどれだけの努力や支援が必要か。
手話だけでは解決できない。
その手話も言葉があって手話を使う健常者と本当の聾唖者のそれでは上手く通じないということもはじめて知る。
知的障害がなくても、取り入れられる情報が少なくなってしまう。
聴覚障害者被告の弟の言葉「常識のなさを感じてしまう」これがそれを物語っているのだろう。
その場にそぐわない言動、それは知能が劣っているのではなく結果として制限されてしまう生活経験の少なさからくるのではないだろうか。

タイトルの累犯障害者とは、自分の居場所を求めて犯罪を重ねてしまう障害者という意味合い。
取り上げられている事件が全部これに該当するわけではないが。
これをすれば刑務所には入れる、そこなら暮らしやすい、と。
暮らしやすさを求めて犯罪を犯す。
刑務所を刑務所だと理解できなくても、ここなら暮らせる、と思ってしまうんですよ。
同じことが売春を続ける知的障害女性にもいえるかもしれない。
お客さんは親切で、かわいい、キレイだと言ってくれ、お金もくれる。
身を売っているのにそれを幸せだと感じてしまうんですよ。
普通の生活の場がどれだけのものなのか、想像しきれない。
そういう場合に必要なのは刑罰ではなくてサポートなのだと思う。
「そんなことしたら刑務所に入れるぞ!」「それだけは勘弁して」などという会話が刑務所から聞こえてくるのは間違っている。

著者の方が秘書給与詐欺で話題になった時、どれだけ豪華なカツラを作ったんだとか鼻で笑っていた。
この本を読み、罪を憎んで人を憎まず、という気持ちになった。
「秘書給与とはそういうもの」と疑う余地のない世界なのかな、とさえ思えてくる。
疑えないというのが間違ってるんだけどね。
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無題
丁寧にコメントありがとうございました。
素敵なブログなのでお気に入り登録させていあただきました。
この本買おうか迷っていたんですよね。今度読んでみようかな。山本さんはムーブやTBSラジオアクセスでもいい発言されていたので。
peco0102 URL 2007/10/06(Sat)  22:24 編集
無題
peco0102さん、こんにちは。
登録ありがとうございます!
読んだものの事をつらつら書いてるだけですが、読んでいただけていると思うと嬉しいです♪
この本を読むと、物を知らない自分にいたたまれなくなります。
意図的に伏せられていることもあるのですけどね。
テレビやラジオでの発言は全く知らなかったのですが、これからはコメントを聞ける人として注目できるかも。
安部譲二さんが山本さんを「まともになって刑務所から出てきた数少ない人」というのに頷いてしまいました。
カクテキ 2007/10/07(Sun)  11:16 編集
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