KIZU―傷― (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 31-1)
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ギリアン・フリン
早川書房
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ミズーリ州のウィンド・ギャップで歯を抜かれた少女の遺体が発見された。シカゴの新聞記者カミルはウィンド・ギャップ出身であることを記事に生かすよう上司にすすめられて帰郷。取材を続け事件の真相を探る中、カミルも自身の傷と向き合うこととなる。
読むのが辛い本だった。
奇を衒った派手さや陰惨さを取り上げているのではなく、社会に内包された問題を扱っているからこその辛さだと思う。
歪んだ心の犠牲になった三姉妹、それがさらに犠牲者を生んでしまった悪の連鎖とでもいうのだろうか。
事件としては解決した後でもカミルを悩ませる、自分にも素質があるのでは…という想いが痛々しい。
カミルの上司夫妻の、血の通った心がその心配を払拭してくれると感じられるラストは救い。
事件の捜査部分は解決できない警察がどうかしていると思える。
それほどに自傷行為に至るカミルの独白が事件を物語っていたといえるのかもしれない。
ひょっとしたら彼女は事件の真相を心の奥底では見抜いていたのではないだろうか。
セラピーで克服したはずの自傷の欲求に悩まされたのはそのせいかもしれないと深読みさせられる。
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