突飛なことではなく(小説家は違うけれど)、どれもが起こりえそうな6編の家小説。
「サニーデイ」、「家へおいでよ」、「グレープフルーツ・モンスター」は、このままだと伊良部先生のところに行かないとならないかも、と心配になる。
が、こちらの主人公はみなさん自分で乗り越えてます。
伊良部シリーズもそうともいえる(笑)。
一番のお気に入りは「ここが青山」かな。
会社が倒産した主人公が奥さんと生活が逆転する話。
まわりは同情の目で見るものの、本人たちにはこれがしっくりきている。
もちろん、初めて体験する家事に主人公は悪戦苦闘するが、それを乗り越える術を自分で見つけられるんだよね。
本で勉強し、魚の焼き方も実践で学ぶ。
この姿勢が見事です。
身近な人は聞けばいいと思ってる人ばっかりなので。
風呂場のカビとり剤の恐怖を奥田さんもわかってくれているのだな、と思うと感動の涙すら浮かんでくる(笑)。
「家においでよ」もいいな〜。
わくわくしながらオーディオ機器、家具、家電をそろえていく。
妻に出て行かれたという悲壮感が微塵もない。
楽しさしか伝わってこない。
楽しすぎて買い物が止まらなくなるのではないかと心配してしまうほどだ。
どの話もこのままだと壊れちゃうんだろうな、という予感がある。
でもこの本の登場人物はみんな、ちょっとおかしなことになっても家を壊すことなくまた家として、家族として歩んでいける。
ほんの小さなきっかけであっちかこっちか紙一重なのかな。
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東野さんのエッセイ。
見ものはカバー・章扉イラスト。
著者ご本人が描かれてます。これが夢吉?
中にもたびたび登場するエッセイ「あの頃ぼくらはアホでした」がとても面白かったので、東野さんのエッセイは期待している。
でも「夢はトリノをかけめぐる」にはちょっと首を傾げてしまったのでこれも読み始める時は恐る恐る。
結果は…面白かった!
映画化の話とか、舞台や映画のパンフレットはちょっと飛ばし読みですが(苦笑)、他はよかったな〜。
年譜や自作解説で、その時にどんなことを考えていたのかがよくわかるし。
お気に入りの作品が売れなかった、とはっきり書かれているのはショックだけど。
真保さんは仲良しなのですね。
数作品、小説のテーマと時期が似通ってしまい不仲、との噂を聞いたのですがどうなんでしょう?
大きなお世話ですね。
小説を書くことに支障が出るのでエッセイから撤退する、と書かれていて残念。
しかしエッセイファンはタイトルの「たぶん」というところに望みをつなげてしまうな〜。
文学賞メッタ斬り! 2007年版 受賞作はありません編 (2007)
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大森 望 豊崎 由美
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毎度の事ながら、紹介されている本は読んでいないものがほとんど。
なのに気になるメッタ斬り!シリーズ。
一番印象に残ったのは巻頭のトークショー、中原昌也さんの「ぼくですよ、にゃーにゃー」だ(笑)。
読んでもいない小説の選評が気になりだしたのは「浅草エノケン一座の嵐」のせい。
これは乱歩賞受賞作なので本になる時巻末に選評が掲載される。
これが誰も褒めてない。
それなのに受賞作。
受賞した長坂秀佳さんも、他の候補の人たちも困っちゃっただろうな、とわくわくしたのがきっかけ。
このわくわくしたって私の感想も間違ってるけれど。
その後しばらく受賞作でも巻末の選評が載らなくなったと記憶している。
というわけで、特に好きなのは「選評・選考委員のメッタ斬り!」。
都知事の言葉に笑わさせていただきました。
私が当該の小説を読んでいないから真意が伝わらなくても無理はないのでしょうが、メッタ斬ってるお二人も「なんのことだか…」とお嘆き。
じゃあ、素人の私のブログだもの、この程度でも十分許されるな、と変な自信になりました。
恒例の巻末、「文学賞受賞作品を、点数で斬る!」は高得点の小説はもちろん、29点以下の小説にも俄然興味が湧く。
と前2冊でも思ったけれどやっぱり読んでない(笑)。
「LOST」という海外ドラマを喜んで見ているんだけど。
…デズさん?(笑)
他人の非日常的なヴィジョンが見えてしまう山葉圭史。
ある日街角で見かけた女性が6時間後に刺されるのを「目撃」してしまう。
怪しまれながら彼女にそれを伝え、なんとか回避する手段を二人でさぐっていく…これが表題作。
結果を言ってしまえば、彼女の命は救われる。
でもそれは運命−ヴィジョンを変えられたからではなく、防刃ベストで刺されるのを防いだだけ。
刺されることにはなんら変わりがない、つまり未来は変えられない、と圭史は言う。
後に続く話では世間的には成功と呼べない運命が変えられなかったとしてもそれが不幸なことだとは限らない、という希望を感じさせる。
エピローグ前の話では、他人のヴィジョンしか見えなかった圭史が自分の死のヴィジョンを見てしまう。
それを1話めで命を救った美緒と食い止めよう、と奔走するタイムリミットサスペンス。
ここで圭史は変えられないはずの運命を変えてしまう。
自分を含め、大勢の人の命を救う。
でもね、変えてしまったことでどこかに歪はでないかね、とちょっと気掛かり(笑)。
小さなことに思えることが少しずつ影響しあって何かを起こしていることだってあるんだから、とバタフライ効果のこと言ってるしね。
このことで何がどこまで変わったのか見てみたい気もする。
私刑連鎖犯 上 (1) (講談社文庫 は 69-5)
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いや〜、読み出すまでに日にちがかかったね。
すぐ邪魔が入るんだもの。
しかし、読み出したらあっという間。
原題「NINE」の意味がなかなかわからなかったけれど、途中からなんとなく、ね。
FBIの凶悪指名手配犯が逆さ吊りの死体で発見される。
現場には「9」の数字が。
刑事アレックスが捜査にあたるが、次々に死体となって見つかる指名手配犯たち。
犯人は市民から凶悪犯を始末してくれる人たち、と歓迎ムード。
自警団気取りで全員を処刑することが目的なのか?
犯人グループは初めから明かされている。
富豪のエヴァレットが高校時代の仲間を仕切って凶悪犯を処刑している。
しかし、これは表向き。
本当の目的は捜査にあたっているアレックスと、同じ高校にいたこれまた富豪のキット。
エヴァレットの手口はキットの義父の連続殺人を模倣したようだし、10年前にその義父を殺したキットの事件を担当したのがアレックス。
さらにはエヴァレットもかつてアレックスに逮捕されたことがある。
これは自警団の名を借りた私憤で、逮捕されたことをいつまでも恨み忘れず、高校当時から片想いの女性がキットに想いを寄せているから、という犯人心理。
因縁というか偏執的というか。
エヴァレットにあるのは無駄な金だったんだね。
生きた金の使い道を知らんヤツに大金持たせちゃいかん、ということだ。
警察やFBIの手配犯が易々と犯人たちの手に捕まるってのが情けない。
手配犯を捕まえるには金が必要ってことなのかね。
犯人とアレックスの対決までの盛り上がり、一気に読めてしまう。
しかし、その後のまとめかたはかなりあっさりしている。
それまでが緊迫していたからそう感じるのかな。
最後の彼女の登場はちょっと驚いたけれど。
キットがエヴァレットの挑戦として飼い犬を殺されてしまった後、あちこちから出てくる犬のおもちゃ等の記述に涙…。
片付けるでもなくそれが出てきてしまい、どうしようもない気持ち、自分もまだ日が浅いだけに…。
もう一匹出てくる野良犬ラスティ。
想像するだけでカワイイワンコさんだけれど、アレックスのグループには無条件でなつき、敵役のアレックスの兄さんは威嚇するという、あまりにもわかりやすい扱われ方はどうだろう。
っていうか、そこまで兄さんが嫌なヤツってのもどうかな。







