深夜の逃亡者 (扶桑社ミステリー マ 26-2)
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リチャード・マシスン
扶桑社
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元ピアニストのヴィンスは精神病院から脱出する機会を狙っていた。脱出して愛するルースをボブの魔の手から救うのだ、と一人決心する。その計画を実行に移した恐怖の一夜。
お初の作家と思っていたが、あの有名な映画「激突!」の作者だとか。
突然やって来られて理解できない要求にうろたえる元マネージャー夫妻、そこに呼びつけられたヴィンスの憎む対象ボブ、ボブを案じて後をつけた身重の妻ルース、この5人の深夜から明け方にかけての数時間の出来事。
「僕のルースを奪ったボブから彼女を助けなきゃ、そのためにはボブを殺さなきゃ」という想いに支配されて行動を起こすわけだけれど、ルースはボブととっても幸せ。それどころかその後に起こした事件で精神病院に入れられたことに同情はするが、一時期とは言えヴィンスに魅かれたことを後悔さえしている。でもヴィンスには「ルースが愛しているのは僕、ボブに騙されている」との考えから逃れられない。今でいうれっきとしたストーカーだ。
ヴィンスの想いは歪んでいて理解不能。それゆえに先の展開が読めずはらはらする。理屈や予測が成り立たない恐怖をどうぞ、という感じかな?
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誰もが敬遠するような依頼を引き受ける元警官の「探偵」。持ち込まれた依頼にのめりこむうちに自身の奥に潜んでいた深い傷と向き合うことになる。
「藁の盾」も面白かった木内さんの2作目(でいいのかな?)。
こういう、自分も知らない心の傷を抱えた男という設定に弱い。そういった意味でこの探偵はまさに私好みだった。それだけで私には「あり」な世界。
人当たりもよく穏やかな男なのに、何故そんなに依頼にのめりこんでいくのか、自棄になっているようにも見える無謀な行動、どれもが「傷」へと向かっていく要因。
2話めのタイトルにもなっている「死ぬ迄にやっておくべき二つの事」、探偵はそのためだけにこの8年を生きてきたかのよう。
何故警察を辞めたのか、家族と一緒でないのか、それが知らされてからはもう…。
おせっかいにも依頼を回してくる元同僚木島、粗野で親しいふりをしないが探偵を気遣う情報屋、出会いは敵だったが行動を共にするうちに探偵と通じ合っていく矢能、彼らの書かれ方もぐっとくる。
ラスト2ページは矢能の男気にちょっと涙。
痛そうな暴力描写も多々あるが、探偵の傷に比べたら…ということで勘弁して下さい(笑)。
最低の犯人を護衛しなければならなくなった警察官の話、「藁の盾」もおすすめ。
![]() | ミステリが読みたい! 2008年版 (2008) ミステリマガジン編集部 早川書房 2007-11 by G-Tools |
今発売中の1月号からミステリマガジンの誌面が一新されているらしい。
それに伴って今まで3月号にあった総括的な内容がこの時期にミステリガイド&ランキング本として独立。
乱読派の私は書評やガイドブックの類が好き。
本の当たり外れに一喜一憂するタイプなので、心構えの本として利用している。
そんな大袈裟なものではなく、単に誰がどんな本を薦めているか、読んでいるかを見るのが好きなのですけどね(笑)。
そういった理由で「このミス」やミステリマガジンの総目録掲載号は購入していた。
その総目録が独立してこの時期発売というのは「このミス」を意識しているのでしょうか、それとも相乗効果狙いでしょうか。
大きなお世話ですね。
ランキングを見ても読んだ本は少ない。
例年、こういったところからチョイスして図書館で借りるのだから当然といえば当然。
それでも何冊か読んだものはある。
で、ちょっと首を捻るのは「治療島」のランクイン。
読み方感じ方は様々だからいいし、先が気になって読んでしまったので面白くないわけではないですよ。
読了後、半怒りだった自分を思い出しただけですよ…(笑)。
そういうことで、私のように3月号だけを買うような人にはおすすめの本ですよね。
時給11万2千円という法外な求人広告に吸い寄せられた男女12人。仕事は「暗鬼館」でルールに従い一日中行動を監視されながら7日間を過ごすというもの。一見お気楽そうだが、それぞれの部屋には殺傷能力のある武器が与えられ、監獄・霊安室といった部屋までが存在する。主催者の狙いはいったい…?そしてバイト仲間たちは無事に7日間を過ごせるのか…?
以下、内容を連想させる部分もあります
暗鬼館のルールというのが曲者。夜には出歩いちゃいけないなどというのはまあ理解できる。しかし時給以外に加算されるボーナスについてのルールが問題。
人を殺せば犯人ボーナスとして報酬2倍、正しい犯人を指摘できれば報酬3倍だもの。事件が起きた場合の解決についても、事実かどうかではなくその場のメンバーの半数の同意が得られるかどうかで決まる。正しいかどうかは問題ではないというのが恐いところ。
事件が何も起きなければ問題ない、と大人しく7日間を過ごそうと意見がまとまったのに3日めに一人が死体となって発見されたことからこのルールの重みが増す。
そこにいない自分も疑心暗鬼になってくる。どう落ち着くんだ?と先がとにかく気になる。そしてそうなったか、と(笑)。
彼女のある意味異常なところを終始疑いの目で見ていたけれど、あれは別物の異常さであったことにも…!
武器に添えられているメモランダムも古典ミステリに詳しければいっそう楽しめたのかな。
新婚旅行初日に花嫁ドリーが失踪した、と青年アレックスが私立探偵アーチャーの元を訪れる。憔悴ぶりから調査を請負うが行方はほどなく判明する。しかしアーチャーが目にしたドリーは血濡れの手に乱れた衣服で「人を殺した」と錯乱状態。彼女の言葉を裏付けるべくある家へ行くと言葉どおりに死体が発見された。幼少時に母親を殺された事件との関連に注目し調査すると恐ろしい真相が見えてきた。
最近感じたことのなかった読後の満足感!
面白かった、以外にも充実した世界を堪能した感じ。
いや、面白ければそれでいいんですけどね。
アーチャーが事実をひとつつかむと事件の違った側面が見え、またひとつつかむと違った側面が、と多面体になっていく。
そして行き着いた先は戦慄を覚える人間のエゴの塊。
内に抱える暗い部に圧倒される。
狂気を孕んだ人と知りながらも一緒に暮らし、その狂気を刺激してしまうというか期待しているような弱さと企みの共存さえ感じる。
他にも対立や重圧といった人間関係のおかれ方がなんともいえない。
初体験のロス・マクドナルド、もっと早く読んでおけばな〜と後悔。
だって、図書館にあまりないんだもの、傷んでるし(笑)。







