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本の感想
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ボトルネック
「ボトルネック」
 [単行本]
 著者:米澤 穂信
 出版:新潮社
 発売日:2006-08-30
 価格:¥ 1,470
 by ええもん屋.com

GFの死亡事故現場で眩暈に襲われ、同じように崖下に転落…と思ったら見慣れた街中。
首を傾げつつ自宅へ戻ってみると家には「姉」がいた。姉なんていないのに。

「自分の生まれなかった世界」へ迷い込んでしまうパラレルワールド物(そんな分野あるのか?)
主人公リョウは高校生。
青春小説といえばそうだけれど爽やかさはない。あるのは残酷さ。
相手は男子高校生だぞ。
「自分がいない」というか「自分がいなかったら」を見せ付けられ、どうするかな。
そんな世界を知らなければ生き方に間違いや正解があるなんてこと考えもしない。
「自分の劣等感を他人に投影してこき降ろして溜飲を下げる」この言葉、嫌だわ。
そういう自分が見えそうで。

米沢穂信さんの本は初めて。
鬱々としてくる話だけれど、嫌いじゃない展開です。
自分の選択がことごとく正しくない選択だったことを見せ付けられ、かといってやり直しができるわけでもない。
そのままリョウも読んでいるこっちも突き放されたような終わりを迎える。
このバッサリ感を楽しむのかな。
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福家警部補の挨拶 (創元クライム・クラブ)
大倉 崇裕
東京創元社
売り上げランキング: 217494

まず犯人が犯行を犯すところから始まる。
犯人が誰なのかも知らされる。
そして捜査にあたる福家警部補が犯人を追い詰める。
そう、これはコロンボ風の短編集です。
著者の大倉さんはコロンボ大好きだそうで。
私も持っている「刑事コロンボ完全事件ファイル」にも執筆されていました。
作品よりもこちらでの出会いの方が早かったことに驚いてます。

福家警部補は刑事には見えない風貌からなかなか現場に通してもらえず、いつも証拠の警察バッジを探してる。
でもその推理力、観察力はあなどれない。
張られた伏線をわくわくしながら追っているうちにあっという間にお話が終わってしまうのは短編ならでは。
きっと映像で見たらここであそこを見てるんだろうな、ここがグッとアップだろうな、と想像させながら読ませてくれます。
シリーズ化されないかな?
毒 poison
「毒 poison」
 [単行本]
 著者:深谷 忠記
 出版:徳間書店
 発売日:2006-08
 価格:¥ 1,785
 by ええもん屋.com

病院が舞台。
卒中で倒れた入院患者、コイツが悪いヤツ。DV旦那なわけですよ。
気に入らないと奥さんを怒鳴りつけ、殴る蹴るの横暴極まりない男。
幸い(なんだかどうだか)後遺症も軽く、いつ退院してもいいのに「高い金を払ってやっているのに(特別室利用)」と退院の素振りを見せない。
こいつ、奥さんに対してだけでなく他の入院患者に対しても暴言を浴びせる。
「あんたは良くならない」とリハビリの気を削ぐようなことを平気で言う。
当然みんなの嫌われ者。
向かいの病室には同じように卒中で倒れ、こちらは半身に後遺症がみられる。
対象的に医師にも看護師にも、身内の奥さんに対しても「ありがとう」の言葉を忘れない優等生患者。
でも、後遺症の残る自分を役立たずと決め、自殺願望を看護師に語る。
仕事柄薬品に詳しく、仕事先から自殺用の毒物を持ち出している、それを飲んで死ぬ、と看護師に言うが毒を取り上げられ、改心したかに見えた。
ある日、病院から毒物盗難事件が発生。それが解決しないうちに横暴患者が盗まれたものと同じ毒で死亡する。

こういった本だから誰かが殺されるだろうことは想像つく。
なので殺されるならコイツであって欲しいヤツが殺されるのでスッキリするが、ということは絶対このままではすまないのだな、と新たな展開が想像される。
その新たな展開がお見事。
ああ、そうか、と気をつけて読んでいればうかがえるかも。
あの横暴男が酷すぎるので気を取られてました。
DV被害者の複雑な心理も伝わってくる。
DVって目に見えることだけじゃないからね。狡猾なヤツもいるからね。
質が悪いったらありゃしない。

以下ネタバレですが。
看護師に自殺をほのめかし、偽薬を手渡した優等生患者、あれで自分に注意を向けさせて影で舌を出していたのかと思うと、心底気持ち悪い。
横暴DV旦那の方がわかりやすい分、罪が少ないかもしれない。
いや、奥さん殴っちゃいけないんだけどね。
でも周りには知られないように、注意を払いながらの優等生患者は許しがたい。
奥さんや子供達の表情がサインだけれどそこまで突っ込めないでしょ。
仕返しが恐いし、経済的に自立できないし、何より周りにこの事実を知られたくない必死さもあるんだろうな。
毒ってのはこの男のことだな。
百万の手 (創元推理文庫)
「百万の手 (創元推理文庫)」
 [文庫]
 著者:畠中 恵
 出版:東京創元社
 発売日:2006-06-10
 価格:¥ 840
 by ええもん屋.com

自宅の火事に飛び込んでいった親友正哉の死を目の当たりにした音村夏貴、14歳。
哀しみにくれる中、形見の携帯電話から正哉の声が聞こえてくる。
「あの火事はおかしい」
正哉の声と共に夏貴は火事の真相を探り出す…

死んだ友達が形を変えて主人公と行動を共にするという設定は「向日葵の咲かない夏」と似ている。
こちらの方が先だし、暗い事件を追っているにも関わらず、少年の清々しさに満ちている。
火事の真相を探るのが一番のテーマ。
そうすると夏貴の通う病院で行われている行過ぎた不妊治療にたどり着くわけで。
そのまわりに母子家庭の生活、過呼吸発作に悩まされる夏貴、突然現われた母親の婚約者といったことが織り込まれる。
たくさん詰め込まれているようだけれど、この行過ぎた不妊治療と全て関わってくるわけなので、そう詰め込み感はない。
後半母親の婚約者の頼もしさに引っぱられるが、携帯電話に現われる正哉との二人三脚捜査をもっと楽しみたかったかな。
ポップ1280 (扶桑社ミステリー)
「ポップ1280 (扶桑社ミステリー)」
 [文庫]
 著者:ジム トンプスン
 出版:扶桑社
 発売日:2006-05
 価格:¥ 840
 by ええもん屋.com

死ぬほどいい女」「深夜のベルボーイ」「取るに足らない殺人」等は読んでいるのにこれはなぜか未読。
「このミス」1位で一番有名なのに。

人口1280人の田舎町の保安官ニック。
うるさい奥さんと知能の足りないその弟(?)が家では彼を追い立てる。
田舎町の保安官なので仕事はそう忙しいわけではない。
揉め事の処理くらいであとはだらだらと暮らし、
愛人との密会に精を出すという毎日。
ぼんくら保安官なわけではなく、悪事にのめり込んでいくイカレタ保安官。
やっかいなヤツラを始末して、それを友人保安官に罪をなすりつける、
保安官の対立候補の悪い噂を蔓延させる、
うるさい女房と弟、愛人までをも片付けようとする。
まあ、悪いことに頭はフル回転。負にパワフル。
この転げ方、とても楽しませてくれる。
でも壊れた男には壊れた結末が待っているわけだ。

保安官対立候補の悪い噂が流布していくのがとても好き。
ニックが何かを言うわけじゃない。
「あいつの噂は…」って言うだけ。
そうすると後はみんなが勝手に内容を考えてくれる。
いやあ、出てくるわ出てくるわ、極悪非道な行いが。
しかもどれも真実味ゼロ。
それでも広まるという噂の恐ろしさ。

またトンプスン熱が再発しそう。
どれも人間の暗黒部分なんだけれど、読み出すと止まらなくなるリズムも好き。
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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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